東京・港区が、南青山の一等地に児童相談所(児相)を含む複合児童施設の建設を計画している件で、14、15日の2日間、同区赤坂で初の大規模説明会が行われた。説明会は計6度となるが、両日とも、近隣住民が「青山のブランドイメージが落ちる」などと建設に強く反発。この問題では、10月の説明会の混乱の様子がネット上で拡散され、話題となっていた。

南青山在住の3児の母は、説明会で「青山のブランドイメージをしっかり守ってほしい。世界に発信していく町。土地の価値を下げないでいただきたい」と強く言い切った。別の在住女性も「入所した子供が一歩外に出ると、そこには幸せな家族、着飾った人、おしゃれなカフェ。その場面と自分を見たときのギャップ。そんな状況が心配。子供のことを考えてほしい」と話した。

児相の建設予定地は表参道駅からほど近い、骨董通りを一本入った路地で、面積3200平方メートル。周辺には青学大、根津美術館、ジャズクラブなどがあり、高級マンションやカフェなども立ち並ぶ。建設費用について区は、国から土地買い受けに70億円超、建物に約30億円で総額100億円超としている。

この費用についても出席者から「バブルのやり方」と批判が上がった。ある女性は、母子施設の入居数、税金などを自ら月換算で試算したとして「1世帯の月の家賃は約83万円。六本木ミッドタウン、虎ノ門ヒルズと、夢のような施設と同じ値段。支援が必要なのはわかるが、とても納得できない」と苦言を呈した。

治安についても「触法少年も入所するとのことだが、セキュリティーは大丈夫なのか」と不安の声が出た。

一方で、賛成意見も出た。在住の中年男性は「子を持つ親として、こんな理由(ブランド低下)で反対したとは、将来子供にとても言えない」と涙声で訴えた。別の30代の在住男性は説明会後に「お金の問題じゃない。建設反対は、虐待を受けている子供を見捨てる、虐待に加担している行為」と訴えた。深夜の相談窓口開設について問い合わせる男性もいた。

両日とも質問が殺到し、14日は40分、15日は20分、終了時刻を超過。区の担当者が質問を打ち切ってウェブ回答に切り替えようとすると、「この場でまじめに答えろ」などと怒声が飛んだ。出席者は14日は153人、15日は162人。会場の外では、付近の不動産会社に事務局を置く団体による反対署名の活動も行われた。

児相の充実は急務となっている。虐待を受けた疑いのある子供は、今年上半期で3万7113人と過去最多。16年の児童福祉法改正で、都道府県と政令指定都市以外に東京23区主管でも児相設置が可能となり、練馬区を除く22区が設置の方針。説明会では反対派からも「児相自体は必要」との声が複数あがっており、区も住民も難しい判断を迫られている。