松井一郎大阪府知事(54)が26日、大阪府庁で定例会見を行った。

「暴露」を予告していた大阪都構想を巡り、昨年4月に当時の公明党府本部幹事長と大阪維新の会幹事長が署名した合意書を公表した。公党間の密約の文書を「暴露」した背景には何があったのか。長年、大阪市政、府政を取材するジャーナリストの吉富有治氏(61)に聞いた。

「いつになったら住民投票ができるねん!おそらく松井氏がブチギレたからでしょう」。怒りの背景として、松井氏と吉村洋文大阪市長は21日に公明党府本部幹部との会談が引き金になった。

維新は都構想の住民投票を来夏の参院選と合わせて実施する方針で、実施するのは来年春の統一地方選前までに都構想案を取りまとめなければいけない。維新は大阪府議会と大阪市議会で過半数に満たないため、公明党の協力は欠かせない情勢。だが、21日の話し合いは決裂した。

「公明党からすればスケジュールありきではない」と吉富氏。合意書にある「慎重かつ丁寧な議論を前提に」とは大阪都構想の設計図である「特別区設置協定書」を作る法定協議会でしっかり議論を尽くすことだといい、公明党としては「それをきっちり作り上げること。そこに不備があってはいけない」という方針だという。

合意書の「任期」について、維新と公明党の見解は分かれるが、吉富氏は「この文書は穴だらけ」と指摘し、この日、松井氏が会見で主張した「これまで何度も煮え湯を飲まされてきたので合意書を交わした」とするなら「この合意書は第三者にみられる可能性があることも想定していたことになる。ならば第三者がみてもおかしくない文書にしなければいけないのに、任期の定義すらない」とした。

公明党が協力しない場合、松井氏と吉村氏は辞職し統一地方選と同日の知事、市長ダブル選も視野に入れている。

「維新は府議会、市議会の過半数をとって、公明党の協力なしに、住民投票をやりたい。そのためのダブル選も視野に入れているのだろうが、ダブル選は維新にとってはあまり効果がない。公明党はダブル選に候補を出すわけではない。市会、府会議員を応援すればいい。ダブル選は公明党への揺さぶりにならない」と分析した。

松井氏は文書は「1通だけ」としたが、吉富氏は「公開された文書は実は導火線で、公明党には表に出したくない維新との約束事があるかもしれない」と話した。