東京・港区で見つかった、正体不明で神出鬼没の路上芸術家バンクシーの作品に酷似したネズミの絵は、はたして、真贋(しんがん)鑑定が可能なのか。

バンクシー作品の取引や、証明書発行の仲介などを行うサイト「The Art of BANKSY.jp」(以下、同サイト)が、19日までに日刊スポーツの取材に応じた。同サイトは、バンクシー作品が本物とされる3通りの道を示した。ただ今回の都の事例では、いずれの道も、実現性または確実性に難があることも判明。鑑定の難しさも浮き彫りとなった。

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同サイトによると、バンクシー作品が本物とされる道は、主に以下の3通りある。

<1>バンクシー本人が認定 同サイトは「バンクシー自身が作品をインスタグラムで公開したり、認めたものに意味がある」としている。ただ今回の都のネズミは、まだ本人のインスタなどに載っていない。同サイトは「バンクシーはこれまで翌日にはインスタ、公式サイトで公開してきました。遅くても数日内にはアクションを起こしています。このことから、バンクシーが関わってくる可能性は薄いかな、と思っています」としている。

<2>「Pest Control(ペストコントロール)」が証明書を発行 バンクシーが公認する認証団体ペストコントロールは、本物と認めた作品には「COA」という証明書を発行する。ただ同サイトは「基本的にペストコントロールは、ストリート作品(落書き)に関しては鑑定していません。法に反しているからです。何か例外がない限りしないのではないでしょうか。販売作品については本物だと認められればCOAが発行されます」。

<3>ギャラリーの独自鑑定 同サイトは公式鑑定以外に「社会的にバンクシー作品だと認めさせる方法はある」とした。「海外にバンクシーのストリート作品を扱うギャラリーがあります。そのギャラリーに独自鑑定をしてもらい、プレスリリースしてもらったり、展示してもらう。一定期間展示してもらえれば、バンクシー作品だと世間に認めさせることはできるでしょう」とした。実際にCOAがなくても本物として展示される作品もあるという。ただ「バンクシー自身はこういったことを好ましいとは思っていないのが実情」(同サイト)。公式鑑定が他にあるだけに、モヤモヤが残る方法でもある。

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同サイトは以上の3通りを示した上で、真贋についての意見や明言は避けた。専門家らが本物の可能性に言及していることについても「仮にバンクシーが残した作品だとしても、専門家と言われる人や周囲が認めただけのものなら、それはアーティストの本意ではない」と否定的だ。

ただ同サイトは、本物である可能性自体は否定していない。都の対応について「作品を今の早い段階で撤去・倉庫保存した都の判断そのものは歓迎しています」と回答。バンクシーのサイトに、都のネズミと酷似した作品があることにも言及した。また、バンクシーが東京に人道問題や公害問題などのテーマを見つけた場合や、逆に本人の作品でなかった場合、再びアクションを起こす可能性もあると指摘した。

同サイトが、「ピカソやアンディ・ウォーホルのように、時代を越えて、語り継がれるアーティストになる可能性の高い」と評価するバンクシー。都のネズミが晴れて「歴史的芸術」となる日は来るのだろうか。【大井義明】