アルゼンチン西部にある南米大陸最高峰アコンカグア(6959メートル)登頂を開始していた冒険家三浦雄一郎さん(86)が、ドクターストップで、登頂を断念したことが21日、分かった。同行医師が、三浦さんの持病である不整脈を考慮し、さらに高い標高での活動は心不全を起こす危険があると判断した。ただ、長女恵美里さん(58)は「三浦の性格からいくと、次のことは考えていると思う」と、今後も登山に挑戦する可能性を示した。

都内の事務所で連絡を受けた恵美里さんによると、三浦さんは「僕自身、大丈夫だと、頂上まで行けるという自信がありましたが、医師の判断に従うことにしました」と話しているという。ドクターストップをかけた同行の大城和恵医師は電話で「この標高は生物学的に86歳の限界。よく頑張ったが、生きて帰るために下りる判断をした」と説明したという。

恵美里さんや事務所によると、現地時間18日、ヘリで着いた5580メートル地点から、キャンプ地「プラサ・コレラ」(標高約6000メートル)に歩いて到着。山頂の風が強いため予定を変更して、2日間天候待ちした。標高6000メートルは酸素が薄く身体の「高所衰退が起こる」(恵美里さん)高度。次男豪太さん(49)の報告では、狭いテント生活の中で、三浦さんが呼吸を苦しそうにしていたという。ただ、6000メートルまでの歩くスピードは順調。体調に急変はなく、既に下山した。

三浦さんは80歳でエベレストに登頂した13年には既に、不整脈を抱えていた。心臓のカテーテル手術経験もあり、心肺機能は通常の6割程度に落ちていた。

恵美里さんは「(断念)直前の電話ではピンピンしていた。『絶好調』と話し、登る気いっぱいだった。一番残念なのは本人だと思う」とした上で「今後の話はしていないが、三浦の性格を考えると、次のことは考えていると思う」と、引退は否定。ただ、ここ数年は約5年間隔の挑戦だが「80代の5年間は重い。体調もみながら」と加えた。