厚生労働省による毎月勤労統計に端を発した不正問題で、同省は、新たに発覚した賃金構造基本統計の担当責任者、局長級の大西康之政策統括官(58)を、1日付で大臣官房付とする人事を発表した。総務省による統計一斉点検で事実関係を報告しておらず、事実上の更迭となる。

毎月勤労統計を担当していた野地祐二統計管理官(58)も先月、更迭された。一方、安倍晋三首相は参院代表質問で、根本匠厚労相の罷免を野党に要求されたが、「再発防止に取り組んでほしい」と拒否した。官僚が辞め、大臣は「温存」する構図は、昨年の森友学園をめぐる財務省の公文書改ざんと重なる。担当官僚の更迭は、事実解明に支障が生じかねず、立憲民主党の福山哲郎幹事長は「官僚まで隠蔽(いんぺい)するのか。全体を把握していたはずの人を予算委員会の直前で更迭し、国会に呼びにくい形にした。言語道断だ」と批判。共産党の笠井亮政策委員長も「しっぽ切りは許されない」と訴えた。

一方、厚労省は会見で、総務省から統計一斉点検の指示を受けた際、賃金構造基本統計の担当室長が、予定していた調査計画の変更に支障が出るのを避けるため「報告しない」と判断したと発表した。総務省に不正を報告しなかったことについて、「隠蔽(いんぺい)の意図は否定できない」と隠蔽の可能性に触れた。