東京都台東区のホテルで昨年12月、タイ国籍の19歳の女性の頭を金属製のレンチで殴って殺害したとして、警視庁下谷署は9日、殺人の疑いで昭和大医学部生の四十宮直樹容疑者(20)を逮捕した。容疑を否認している。

捜査関係者によると、タイ人女性はビザ免除(在留期限15日間)の観光目的で昨年12月に来日。直後にタイ人女性専門の派遣型風俗店に入店し、被害に遭っており、署は来日の経緯などについても調べる。

下谷署によると、四十宮容疑者は「棒を使って強くたたきすぎたら、女性が亡くなった。殺すつもりはなかった」と容疑を否認しているという。

署によると、昨年12月18日午後8時半ごろ、ホテルの別の客から「男女の争うような声がする」と連絡を受けたホテルの従業員が、5階の部屋から女性の悲鳴とドンドンという音を聞き、通報した。

署員が部屋のドアをノックすると、室内から「ちょっと待って」という男の声がしたという。合鍵で入ると、着衣を身に着けていない女性が、あおむけで、頭から血を流して倒れていたという。女性は翌19日、死亡した。

室内に男の姿はなかったが、窓が開いており、署員がホテル周辺の路上で倒れている四十宮容疑者を発見した。同容疑者は頭蓋骨と腰骨の骨折で入院していたが、退院した9日、殺人容疑で逮捕された。

部屋に残されたリュックサックには、秋葉原で購入した長さ36センチ、重さ835グラムの金属製のトルクレンチが入っており、血液が付いていた。署は凶器とみて調べている。

捜査関係者によると、死亡したセーンネ・パニダさんは、昨年12月5日に来日。直後に台東区根岸のタイ人専門派遣型風俗店に入店し働いており、その中で被害に遭ったとみられる。タイ国民は日本への入国の際、観光目的などではビザが不要で15日間の短期滞在が認められている。セーンネさんは20日までが在留期限だった。未成年のため渡航には親の許可が必要で、母親には旅行で訪日すると伝えていた。母親は「旅行で日本に行っていると思った」と話しているという。

捜査関係者によると、この風俗店は事件後、閉店した。署は入管難民法違反(不法就労助長)の疑いもあるとみて、経緯を調べる。【村上幸将】