安倍晋三首相は12日の衆院予算委員会で、10日の自民党大会の演説で、民主党政権を「悪夢のような政権」とした自らの発言を取り消すよう、民主党政権で外相を務めた岡田克也氏に要求されたが、拒否した。

岡田氏は「(民主党は)自民党政権の重荷を背負いながら政権運営をしてきた。そのことを考えると、あんな発言は出てこないはずだ」と指摘。「政党政治で、頭から相手を否定して議論が成り立つのか。全否定するようなレッテル貼りはやめてほしい」と、首相の「悪夢」発言を厳しく批判した。

しかし首相は、「少なくとも、バラ色の民主党政権ではなかったことは事実ではないか」と、反論。岡田氏は、「全く了承できない。取り消しなさい」と求めると、首相は「取り消しなさいと言われても、取り消しません」「重荷とは何ですかと」と色をなして反論。険悪な空気が流れた。

首相はさらに、「なぜ『民主党』という名前を変えたのか」「採決で『アベ政治を許さない』と(安倍政権を)全否定したプラカードを持っていたのは、どこの党だったのか」と、引かずに反論を続け、首相と旧民主党政権幹部による、異例の批判合戦になった。

首相は10日の自民党大会で、春の統一地方選と夏の参院選が重なる「亥(い)年」選挙に絡み、前回の亥(い)年選挙で参院選に敗れた経緯に触れ、「(その後)悪夢のような民主党政権が誕生した。あの時代に戻すわけにはいかない」と発言。場内はどよめいたが、首相は「皆さん、しみじみ思い出してもらったと思う」と笑顔で意に介さず、「今回(の亥年選挙)も厳しい戦いになるが、まなじりを決して戦い抜く。その先頭に立つ」と訴えた。

ただ、歴代の政権を否定するような首相の物言いには、自民党内でも「過去に終わった政権を引き合いに、自分たちが正しいというやり方は危ない」(石破茂元幹事長)懸念の声が出ている。