会社法違反(特別背任)などの罪で起訴され、東京拘置所に勾留されていた日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(64)の保釈から一夜明けた7日、ゴーン被告が保釈時に着用した作業服を提供した埼玉県内の建築会社代表取締役を務める60代男性が日刊スポーツの取材に応じた。作業服は、弁護団の高野隆弁護士(62)から頼まれ、男性が上下5800円で購入したものを貸したと証言。作業服で変装し、軽ワゴン車に乗り込む前代未聞の保釈劇の裏側が一部明らかになった。

   ◇   ◇   ◇

取材に応じた男性はゴーン被告が保釈された6日朝、弁護団の高野弁護士から電話で「作業服一式を貸してほしい」と頼まれたという。高野氏は昔からの知人。「そんな依頼は初めて」と驚きながらも「誰の頼みでも断らないから」と、無償提供に快く応じた。

作業服は男性が現在使用しているものだった。「急なことだったので、ちょうど洗濯済みでぶら下げてあった、私自身が着ているものをお貸ししました」。ポリエステル製で、国内最大手の作業服専門店「ワークマン」製。男性が現在使用する3着中の1着で、上下各2900円で計5800円。5~6年前に作業員が使うことも考慮し、当時50~60着分買いだめしたものだった。帽子は業務委託契約を結ぶ「日本電装」から配布されたもの。作業服や帽子を急いで自宅にあった紙袋に詰めたという。

最初は「都内まで持ってきてくれ」と言われただけで、使用理由は分からなかったという。ケガで足が悪いため、塗装工事などを行う会社を営む知人に「車で乗せていってくれないか」と依頼。知人が所有する軽ワゴン車の助手席に乗り込んだ男性は、都内で作業服を高野弁護士関係者に渡して帰ろうとしたが、返してもらうことを考慮し、なりゆきで、東京拘置所まで行くことになったという。

保釈後、作業服姿のゴーン被告が都内の弁護士事務所に向かう道中も軽ワゴン車の助手席に乗っていた。後部座席のゴーン被告の様子について「表情は分からないが、隣の弁護士とずっと英語でしゃべっていた」。ゴーン被告は車中で作業服を脱いだという。「(積んでいた)ペンキの上でいいから」との男性の指示通り、作業服が脱ぎ捨てられていたという。

また、軽ワゴン車は弁護士事務所に最短ルートで直行しなかったため、報道陣を巻いたのではとの臆測についても言及。男性は「都内の道は分からないので、迷子になりました。軽ワゴン車でスピードが出るわけじゃないし、隠せるわけもない」と否定した。

ゴーン被告とは面識もない。「うすうす(ゴーン被告絡みと)分かりましたが、やっぱりビックリしましたね。こんなことになるとは思わなかった」と、想定外の事態に戸惑っていた。