台風15号の影響で、千葉県市原市のゴルフ練習場「市原ゴルフガーデン」のネットを支える鉄製の支柱が複数本倒れ、隣接する10棟以上の住宅に倒れ込み、台風が通過した10日も、手つかずのままになっている。

この日、住民は壊れた自宅の片付けに追われた。鉄柱が屋根を突き破った住宅では、生後3カ月の男児がかすり傷を負ったものの、無事に救出されていたことも明らかになった。

   ◇   ◇   ◇

「市原ゴルフガーデン」の鉄製の支柱は狭い道路をまたいで、隣接する住宅街に倒れ込んでいた。高さ10メートル以上の鉄柱がネットと一緒に100メートル以上にわたって、10棟以上の住宅に覆いかぶさっていた。

被害を受けた住民の1人、会社員男性(63)の自宅は、倒れてきた鉄柱に2階の屋根を押し割られた。当時、1階で就寝中だった男性は「9日午前3時過ぎにドーン、ガチャーンというすごい音がした。2階に上がると、屋根が割れていて、天井から雨が降っていた」。道路は折れた鉄柱や電柱から垂れ下がる電線などに阻まれ、車は通行できない。「しばらく住めないし、車を動かせないから遠くにはいけない」と困った表情を見せた。

会社員の松山高宏さん(55)の自宅2階の屋根にも鉄柱が倒れ込んだ。「起きちゃいけないことが起きた。周囲の人たちはちゃんと生きているのかと。ちょっとパニックになりました」。松山さんによると、倒れた複数の鉄柱は48年前の建設当時のもので、約20年前に鉄柱が継ぎ足されたという。「ゴルフボールが住宅街に飛ばないようにとのことだったと思いますが、見た目は基礎がゆるい感じだった。途中から継ぎ足して、果たして強度は大丈夫だったのか」と不信感をのぞかせた。

会社員の湯浅泰一さん(65)の次男夫婦の自宅2階の屋根には、鉄柱2本が倒れ込んだ。うち、鉄柱1本は寝室の屋根を突き破った。次男夫婦と生後3カ月の男児が就寝中だった。「次男夫婦は、そばのベビーベッドで寝ていたはずの赤ちゃんがいないと。真っ暗な中で探すと、角材などがれきの下から赤ちゃんが見つかったそうです。赤ちゃんの顔は、落ちてきたソーラーパネルのガラスの破片で覆われていたと。パニックになりました。足や手から出血してかすり傷も負いましたが、赤ちゃんの命が無事で良かった」と胸をなでおろした。

2階は鉄柱が食い込んだままで片付けられず、角材やガラスの破片が散乱した状態だ。1階の片付けを手伝っていた湯浅さんは「信じられないことが起きた。こんな状況で、今もゴルフ練習場から説明もない」と途方に暮れていた。【近藤由美子】

▽「市原ゴルフガーデン」担当者は「天井のネットは強風時には降ろしており、今回の台風通過にも降ろすなど、準備はしていた」と対応の正当性を強調。「強風が予測を超えていて、どうしようもなかった」と振り返った。