2020年東京オリンピック(五輪)のマラソンと競歩の札幌移転などを話し合う、国際オリンピック委員会(IOC)調整委員会が30日から行われるのを前に、大会組織委員会の武藤敏郎事務総長が29日、記者団の取材に応じた。移転した場合の費用について、IOCに一部負担を要請する考えを示した。

調整委員長を務めるジョン・コーツ氏が移転費用に東京大会予算の「予備費」を検討すると表明した件について、武藤氏は「そのような性格のものではない」と語った。

予備費とは天災など予期せぬ事態が生じた場合に充てるもので1000億~3000億円が明記されている。組織委には拠出する余裕はなく事実上、都が負担することになり「予備費を使えば都負担となってしまう可能性がある」と財源として否定的な考えを示した。

東京都は25日のコーツ発言に強く反発した。都側は予備費は充てられないと断言。この日は都議会の石川良一議長らが武藤氏のもとを訪れ、都議124人の総意としての声明を組織委に提出した。札幌案に行きついた経緯説明や、都や競技団体の合意を得るよう求める内容。30日にはIOCトーマス・バッハ会長宛てにもメールで送付する。

一方で、組織委6000億円の予算内にある「調整費」350億円も移転経費に使えない実情がある。コーツ氏が言う「予備費」が調整費を指している可能性もあるが「会場移転のために使うことは全く想定していない予算」と断言。あらためて「IOCに負担をお願いしたい。コーツ氏も全面否定はしていないようにも感じる」と語った。

大会関係者によると現在、組織委と都は水面下で落としどころを探っているが、調整は難航している。調整委3日間のどこかでIOC、組織委、都、国の4者会談を実施し、結論づけたい考えだが、難航が予想される。【三須一紀】