英語の民間検定試験が延期された2020年度開始の大学入学共通テストで、国語と数学の一部に導入される記述式問題が、次の争点に浮上した。

文科省は予定通り実施する方針だが、教育関係者、高校生、野党らは目的、内容、公正性などに重大な問題があるとして、中止を求める声が高まっている。

国語と数学1・Aに導入予定の、記述式問題の概要と主な問題点は次のようなものだ。

▼思考力、表現力、判断力などを測るため、各3問出題予定。

▼国語は各問の結果を踏まえた5段階の総合評価(マークシートは別に200点)。数学は各5点(100点満点)。

▼採点は、約50万人の2科目分を約1万人が十数日間で完了しなければならない。約61億6000万円で落札したベネッセグループ会社の学力評価研究機構が、24年3月末まで契約し担当。採点者はアルバイトが予定される。作業はまず一部を抽出して採点基準を決め、全体を採点。その後一部を点検する。全答案の点検は難しい。基準の徹底や質の担保が困難とみられる。

▼国語の問題は採点にブレが出にくいよう、答え方にさまざまな条件を設定している。プレテストでは、同じ答えでも評価にブレが生じるケースがあった。自分の答えを書き写す時間がない場合もある。自己採点と実際の結果が一致しなかった人は3割に上り、2次試験の学校選択への影響が懸念される。

▼数学のプレテストは、問題に日常生活の情景描写や太郎さんと花子さんの会話などが使われ、設問が長めだった。正答率も3~10%と低かった。本番では、文章で記述する問題は出題されない予定。

実際にプレテストを解いてみた都内の高校2年生は「国語は答えの記述にさまざまな制約がつけられ、単にマークシートをマス目に置き換えただけです。数学は、通常の数学の問題が要求する論理的思考を必要とせず、日本語で与えられた設問条件を数式に変換するといった機械的作業。思考力や表現力を問うはずが、形骸化しているように感じます。入試を変えるという人は、実際の問題をみているのでしょうか。内容について、議論されていないように思います」などと話した。

記述式については、大学教授や予備校講師らが10月13日に開催したシンポジウム「新共通テストの2020年度からの実施をとめよう!」の場でも、英語民間検定試験とともに大きなテーマとして取り上げられ、さまざまな問題点が指摘された。

英語の民間検定試験の延期で、各大学は20年度入試について、早急に見直しなどを求められることになったが、記述式問題、特に国語についての姿勢、対応も注目される。

国会内でも、論戦のテーマになる見通しだ。英語の民間検定試験延期で勢いづく野党は、記述式問題や民間検定試験の中止を求めていく構えだ。

【プレテストの国語記述式の指示例】

……まことさんは、どのようにまとめたと考えられるか。後の<1>~<4>を満たすように書け。

<1>二つの文に分けて、全体を八十字以上、百二十字以内で書くこと。

<2>一文目は「話し手が地図上の地点を指す」行為が「指さされたものが、話し手が示したいものと同一視できないケース」であることを資料に示されたメニューの例に当てはめて書くこと。

<3>二文目は聞き手が「話し手が示したいもの」を理解できる理由について書くこと。ただし、話し手と書き手が地図の読み方について共通の理解を持っているという前提は書かなくてよい。

<4>二文目は「それが理解できるのは」で書き始め、「からである。」という文末で結ぶこと。