公費が投入された「桜を見る会」に、安倍晋三首相の地元後援者が多数招待されていた問題をめぐり、首相は20日の参院本会議で、人選への関与を否定した今月8日の自身の発言を、ひるがえした。事務所の相談があれば「意見を言うこともあった」と述べ、私人であるはずの昭恵夫人による推薦枠があったことも判明。「公私混同」ぶりが、ますます露呈してきた。首相在職日数が2887日と憲政史上1位になった記念すべきこの日も、「桜」をめぐる疑惑は消えなかった。

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在職日数1位を迎えた20日。安倍首相は参院本会議で、8日の参院予算委員会以来約2週間ぶりに「桜」問題で野党の追及に釈明した。そこで、過去の発言とのずれが明らかになった。

首相は8日の共産党の田村智子参院議員との質疑で、招待の人選に関連し「招待者のとりまとめなどには関与していない」と述べたが、この日は「私の事務所が内閣官房からの推薦依頼を受け、幅広く参加希望者を募ってきた。私も事務所から相談を受ければ、推薦者について意見を言うこともあった」と、自身の関与があったことを認めた。

「最終的な(人選の)とりまとめには一切関わっていない」として、「8日の答弁が虚偽との指摘は当たらない」と強弁したが、野党からは「『総理のご意向』を拒否する官僚が、いるものか」(関係者)と、加計学園問題のキーワードを用い、首相の人選への「介入」の可能性を指摘。関与を否定した8日の答弁とは異なるが、首相は一方的に言及しただけで、謝罪もなかった。野党は「虚偽答弁だ」(立憲民主党の蓮舫参院幹事長)と、首相の対応に反発を強めている。

政府側は、今年の首相の推薦枠人数は1000人と述べたが、その中に「アッキー枠」があったことも判明した。衆院内閣委員会で内閣府の大西証史内閣審議官が、首相の事務所が参加希望者を募る際、夫人による推薦があったと述べた。

夫人はファーストレディーだが、私人。にもかかわらず、公的行事の招待者人選に関与していた。菅義偉官房長官は「最終的には内閣官房、内閣府がとりまとめる」と強調したが、夫人は森友学園をめぐる国有地売却問題でも、学園の前理事長夫妻と親密な関係を築き、「公私混同」と批判された経緯がある。

次々と新事実が判明し、野党は、首相に予算委員会での質疑に応じるよう求めているが、与党は首相を守るように応じる構えをみせない。「言い逃げ」では済まない説明責任を抱えた首相は、ジリジリ追い詰められている。【中山知子】