従業員のストライキで一時、業務が停止した東北道・佐野サービスエリア(SA=栃木県佐野市)上り線のフードコートの問題で、売店の運営会社「ケイセイ・フーズ」が3日、8月14日にストを起こした前総務部長で労働組合の執行委員長を務める、加藤正樹氏を解雇したと明らかにした。解雇は2日付。

ケイセイ・フーズは代理人弁護士を通じ発表した文書の中で、加藤氏が会社が倒産するなどと虚偽の事実を仕入れ先に伝えたり、仕入れ先に対し労使紛争で労働組合側に立たないと取引を打ち切るなどとどう喝したことなどを解雇理由に挙げた。

<1>加藤氏が7月初め頃からSAの仕入れ先に対し「ケイセイ・フーズには金がない」「飛ぶ(倒産する)」などの虚偽の事実を述べた

<2>加藤氏が<1>に発言したことで社に信用不安が生じていることを知りながら、7月31日に本来、支払うべき金額より少ない額の仕入れ代金を取引先口座に振り込んだ。それにより、取引先は社の信用に強い不安を覚え、納品を控えることとなった結果、SAでは8月4日から多数の商品の欠品が生じた

<3><2>が故意でなく過失によるものだったとしても、加藤氏が総務部長の要職にあったこと、月額100万円という高額な賃金の支払いを受けていたことなどから、金額に誤りがないよう万全の注意を払うべきだったのに怠った。過失の程度は著しく重い

<4>7月20日の労使交渉の様子を撮影した動画データを一部メディアに開示し、秘密情報を漏えいした。社は第三者への開示を承諾した事実はない

<5>SAの取引先の関係者に、労使紛争に関して労働組合緒側に立つのでなければ、取引を打ち切るなどとどう喝し、社の営業を妨害した

<6>10月31日にSA事務室で、社から現金を届けに来た同僚の面前で、机を手で思い切りたたき、繰り返し「出てけ」などと怒鳴り、詰め寄った

<6>社と労働組合の団体交渉が決裂していないにもかかわらず、決裂したとの事実に反する投稿をSNS上でした

佐野SAの問題は、ケイセイ・フーズの親会社に関する信用不安情報が取引先業者に露見し、商品が納入されなくなったことに端を発し、加藤氏が当時の岸敏夫社長に会社の資金繰りが厳しいことを糾弾した途端、解雇されストに発展。9月17日になって、会社側から労組に現場復帰しないかと打診があり、同24日に通常営業を再開。岸社長は退任し、後任に建設会社を営む福田紳一氏が就任した。

ただ、加藤氏によると、9月17日に会社側から届いた文書には、福田氏が新社長を引き受ける条件として、スト中にSNSで一方的にさまざまな情報を発信するなどした加藤氏の退職と記された。同31日には加藤氏が速やかに退社しない限り、3人の組合役員に、損害賠償請求訴訟を提起すると記されていた。

労働組合は、東北道を管理、運営するNEXCO(ネクスコ)東日本と子会社のネクセリア東日本に対し、ケイセイ・フーズに不当な主張を撤回するよう指導することなどを要請する申し入れ書を提出。また11月29日には、会社側が加藤氏に退職を執拗(しつよう)に強要し、速やかに退職しないなら、損害賠償請求訴訟を提起する旨の文書を送り続けているなどと主張。「労働組合法で禁じられている、労働組合員への不利益取り扱い(労働組合法第7条1号)や労働組合の支配介入(労働組合法第7条3号)の不当労働行為に当たる違法な『組合つぶし』」として栃木県労働委員会に救済申し立てをしたと発表していた。

ケイセイ・フーズは、加藤氏の解雇は懲戒解雇ではなく、普通解雇とした。