乗客が新型コロナウイルスに感染したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で11日、前日10日に判明した65人の感染者が下船し、病院に救急搬送された。また医療的措置が必要な乗客も数人、下船したという。感染者が9日までの70人から、10日に新たに65人の感染が判明し、感染者数がほぼ倍増した船の周辺は、複数の救急車がサイレンを鳴らしながら相次いで駆け付けるなど緊迫の度を増した。

救急車に加え、新たに大型バスも乗り入れた。バスは窓ガラスを布のようなもので覆い、内部が見えない状態で、運転手は防護服とマスクを着用し、険しい表情でハンドルを握っていた。一部の乗客によると、午前10時台からカートなどの荷物を引いた他の乗客とみられる人々が、船の搬出口に向かっていたという。バスは船の搬出口と、救急車が随時、待機した客船ターミナルの間を往復しており、同乗客は「バスは乗客を船から(救急車へ)運んでいたかも知れない」と語った。

船内放送では、一部の乗客から、感染拡大の要因になっているのではないか? と不安や疑問の声が出ていた、船内の空調に関して船長から説明があったという。一部の部屋では、排気口から黒いほこりのような物質が漏れ出すなどの不具合も生じていた。船長は「空調に関し、心配の声をいただいているのですが、皆様の元に新鮮な空気をお届けできるよう現在、本船では外の空気を100%利用した空調を行っております」と問題がないことを強調した。

船には11日現在、政府から45人の医師、55人の看護師、45人の薬剤師が政府から派遣され、医療チームを組んでいるといい、その中には、無償で働く人もいるという。船は、船内で飲む真水の精製などの作業のため外海に出たが、その際には海上保安庁から派遣された2隻の船が同行した。

11日は建国記念の日で、船内放送で祝日に関する説明がなされた。その上、日本人の乗客には小さな日の丸の旗と、のどあめが1つずつ配られたという。また全乗客に、ストレスチェック用のアンケートも配布された。香港人の男性乗客(80)の感染が1日、下船した香港で発覚したことを受けて、3日から日本政府の検疫下に入り、5日朝には全乗客に自室待機の指示が出て1週間。感染拡大に歯止めが利かず、緊迫した状況が増す中、船は乗客に丁寧な説明を続けている。【村上幸将】