ジャーナリストの伊藤詩織さん(31)が8日、都内で会見を開き、15年4月に元TBSワシントン支局長の山口敬之氏(54)から性的暴行を受けたと17年に実名を公表して明らかにした後、漫画家A氏を含む3人からインターネット上で事実に基づかない誹謗(ひぼう)中傷の投稿で精神的苦痛を受けたとして、東京地裁に損害賠償などを請求する訴訟を起こしたことを明らかにした。8日午前、訴状を東京地方裁判所民事部に提出した。

伊藤さんは、フジテレビ系「TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020」に出演した女子プロレスラーの木村花さんが、SNS上で誹謗(ひぼう)中傷を受けたとして、5月23日に22歳の若さで亡くなったことが、今回のアクションを起こすにあたり、急ごうと思った要因の1つだと語った。

伊藤さんは「裁判の準備をしている間も苦しかった。精神的に大きな負担となった。見返したくない言葉を見返し、気にしないと思っても傷が刻まれることがあった」と語った。その上で「その中、木村花さんの件を耳にして本当にショックだった。スピード感を持って私のアクションを起こさなければいけないと急ぎ足で訴訟をスタートすることにしました」と語った。

インターネット上で権利侵害に当たる投稿がなされた人を救済するため、2002年(平14)にプロバイダー(接続業者)責任制限法が施行された。ただ、プロバイダー側に発信者情報の開示を求めても開示されないケースが多く、開示を求めて訴訟を起こせば時間がかかるなど、被害者の負担が大きいことが問題視されており、施行当時、想定されていなかったSNSがこれだけ普及していることから、制度改正を求める声が高まっている。高市早苗総務大臣は、5月26日の記者会見で制度改正を急ぐ考えを示し、自民党も1日から議論を進め、情報開示手続きの簡素化を目指している。一方で、厳罰化の声が出ている一方、表現の自由の侵害への懸念の声もある。

伊藤さんは「本当に相手が見えないことが私の中で大きくて。情報開示の壁が高い。そこを低くしていただいて(誹謗(ひぼう)中傷の)言葉の議論を進めていけたらと思う」と語った。