ジャーナリストの伊藤詩織さん(31)が20日、15年4月に元TBSワシントン支局長の山口敬之氏(54)から性的暴行を受けたと17年に実名を公表して明らかにした後、インターネット上で事実に基づかない誹謗(ひぼう)中傷の投稿により精神的苦痛を受けたとして、自民党の杉田水脈衆院議員(53)を相手に、220万円の損害賠償などを請求する訴訟を東京地裁に起こした。この日午前、訴状を提出した。

訴状によると、英国の公共放送BBCが2018年(平30)6月28日に、伊藤さんの一連の問題について取り上げた報道番組「Japan's secret shame」(日本の秘められた恥)を放送した。その番組内で、杉田氏は

「彼女の場合は明らかに女としても落ち度がありますよね。男性の前でそれだけ飲んで、記憶をなくしてっていうような形で。社会に出て来て女性として働いているのであれば、それはイヤな人からも声をかけられますし。それをきっちり断わったりとかするのも、スキルの内ですし」

「男性の方は悪くないと、犯罪ではないという、司法裁判が下っているわけです。そこを疑うということは、日本の司法に対する侮辱だと思います。日本の警察、世界で一番優秀です。伊藤詩織さんがああいう記者会見を行って、ああいううその主張をしたがためにですね、あの、山口さんや山口さんの家族には、『死ね』とかっていうような誹謗中傷のメールとか電話とかが殺到したわけですよ。男性側の方が、私は本当にひどい被害を被っているんじゃないかなという風に思っています」

と批判的なコメントをした。その上で同月末のブログに「伊藤詩織氏のこの事件が、それらの理不尽な、被害者に全く落ち度がない強姦事件と同列に並べられていることに女性として怒りを感じます」と批判的な投稿をしたという。

さらに杉田氏は、同29日に自身のツイッターで

「もし私が、『仕事が欲しいという目的で妻子ある男性と2人で食事にいき、大酒を飲んで意識をなくし、介抱してくれた男性のベッドに半裸で潜り込むような事をする女性』の母親だったなら、叱り飛ばします。『そんな女性に育てた覚えはない。恥ずかしい。情けない。もっと自分を大事にしなさい。』と。」

と投稿した。原告側は「『仕事が欲しいという目的で…男性のベッドに半裸で潜り込むような事をする女性』とは、ツイートされた時期やその内容に照らし、原告を指していることは明らかである」とした。

杉田氏の一連の報告、ツイートに対し、伊藤さんに対する誹謗中傷のツイートなどがなされた。それに対し、杉田氏がツイッターの機能の「いいね」を押したことが、名誉感情侵害に当たるとして訴訟を起こした。BBC番組内のコメントについては、今回の裁判では問題にしていないという。

伊藤さんは6月8日、ツイッター上で「枕営業」などの誹謗中傷の投稿で精神的苦痛を受けたとして、漫画家はすみとしこことA氏、同氏のツイートをリツイートした2人を相手に損害賠償などを請求する訴訟を東京地裁に起こした。同日、都内で開いた会見では、ツイッター以外に投稿された誹謗中傷に対しても、訴訟の準備を進めるとした上で「本人の前で責任を持って言えるか考えて欲しい。次の世代に引き継いで欲しくない。私たち世代で終わりにしたい」と訴えていた。

伊藤さんは、2度目の訴訟を提起したことを受けた、この日の会見には登壇しなかった。関係者によると、伊藤さんの精神的負担が大きいことを考慮したとし、代理人弁護士の山口元一弁護士、佃克彦弁護士、西廣陽子弁護士が登壇した。