9月16日の菅内閣発足から20日を迎えた。支持率はおしなべて小泉内閣、鳩山内閣の発足時に次ぐ水準で滑り出しは上々だが、政府を批判した学者の日本学術会議会員への任命を拒否するなど、批判や異論は許さない恐ろしい牙ものぞかせ始めている。「安倍政権の継承が私の使命」と言う菅義偉首相を安倍政権の天敵だった議員はどう見ているのか。5日は田村智子共産党政策委員長(55)、6日は辻元清美立憲民主党副代表(60)に聞く。

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内閣支持率が高い。読売、日経が74%。朝日でも65%、毎日でも64%が支持すると回答している。「苦労人で、たたき上げで、今までのような2世、3世とは違うんじゃないかという期待があるのかもしれない。でも持ち上げすぎてますよ。批判的報道がほとんどないものね」。

一番の不満は、コロナについて首相が語らないことだ。「デジタル庁とか不妊治療とか携帯料金とか、個別の政策としてはあると思うんですけど、日本社会が直面しているのはコロナですよね。不況や生活困窮の不安に対して、総裁選でも語らないし、総理になってからも語らない。コロナによる苦しみをどうするかっていう答えがデジタル庁なんですか。違うんじゃないのって思います」。

就任後、初の会見で「安倍政権の継承が使命」と語った菅氏は「桜を見る会」の中止を決め、ジャパンライフ元会長が詐欺容疑で逮捕されたにもかかわらず、再調査は行わない。モリカケや公文書改ざん問題の真相解明にも否定的で「負の遺産」は封印する考えだ。

「桜を見る会の招待状を使った詐欺容疑ですからね。被害に直接かかわり、片棒を担いだことになる重大事案なんです。招待状が本物なのか、なぜそんな使われ方をしたのか、政府が調べるべきですよ。中止にすれば検証しなくていいっていうことにはならないんです」。内閣府のヒアリングで田村氏は「ステージが変わったじゃないですか。それでも調査しないんですか」と迫ったが、担当職員は「すでに総理や官房長官が記者会見で述べた通りです」と答えた。総裁選のさなか、菅氏はテレビ番組で政府の方針に反対する官僚は「異動してもらう」と発言している。「恐ろしいですよ。あんな脅しはないですよ。総理が『終わった』って言ったことを調査したら、異動させられちゃうんですから」。

臨時国会は26日召集の見通しだ。所信表明演説は早くて就任から40日後となり、2000年以降では最も遅くなる。「あまりに突然、総裁選になって、この国をどうしていくかというビジョンを練り上げる時間がなかったのかなと推測しているんです。だからコロナについても語れないのかな、この危機を乗り越えてどういう社会を目指していくのか語れないのかなって。目くらましとして、対決点とならないような携帯電話とか不妊治療の話を出してきているのかなって」。

6月17日に通常国会が閉会した後、国会は首相指名で3日間開かれただけだ。「一番大変な時期にですよ。こんなばかな話、ないです」。“天敵”は怒りまくっている。【中嶋文明】

◆天敵VTR 昨年11月8日の参院予算委員会で、田村智子氏は「桜を見る会」に安倍首相の後援会関係者が多数招待されていることを指摘。「総理の後援会の一大行事になっている」と公私混同をただした。首相は「招待者の取りまとめには関与していない」と釈明したが、5日後の11月13日には20年度の「桜を見る会」の中止を発表した。野党は首相出席の予算委員会の開会を求めたが、与党は拒否。予算委員会は11月8日を最後に、12月9日の臨時国会閉幕まで開かれなかった。

◆田村智子(たむら・ともこ)1965年(昭40)7月4日、長野県小諸市生まれ。早大卒。98年参院選(比例)から国政選挙に挑むが、参院選で3度、衆院選で2度落選。6回目の挑戦となった10年の参院選(比例)で初当選した。当選2回。16年、副委員長。20年、政策委員長。趣味は合唱で小学4年から大学卒業まで13年間続けた。夫と1男1女。