菅義偉首相の長男正剛氏が勤める放送事業会社「東北新社」による総務省幹部への接待疑惑に関与した山田真貴子内閣広報官(60)が、きょう25日、国会に参考人招致される。山田氏は2019年11月に正剛氏らから7万4203円の接待を受けた。野党側は他の総務省幹部の会食代よりも突出して高額で、当初の回答が一転したことなどから招致要求していた。24日、接待疑惑の対象となった幹部職員11人の懲戒処分も総務省から公表された。

「飲み会を断らない女」を自任する山田氏は、参考人招致を断らなかった。菅首相の肝いりで女性初の内閣広報官に就任、首相会見などを司会として取り仕切る山田氏が、25日の衆院予算委員会で参考人席に座ることになった。

これまで野党側からの参考人要請に応じなかった山田氏が接待疑惑で「渦中の人」に急浮上した。懲戒処分が発表された総務省幹部らの疑惑が深まる中、山田氏は「記憶がない」と会食への同席を否定してきた。

だが、22日に2019年11月に正剛氏らに単価7万4203円の会食を受けたことが発覚。他の総務省幹部との会食代よりも突出して高額だった。加藤勝信官房長官は24日、「和牛ステーキ、海鮮料理など」と調査結果を明らかにした。正剛氏が勤務する放送事業会社「東北新社」の報告では参加5人で総額37万1013円だった。

放送の許認可権を持つ総務省と東北新社の会食は国家公務員倫理規程に違反する疑いがある。会食当時、総務省総務審議官だった山田氏は「行政をゆがめるような不適切な働きかけはなかった」と主張。一方で、今回の調査は山田氏自身が東北新社に依頼、自ら報告していることから、野党側は「本人任せの調査など論外だ」と批判している。

山田氏は昨年4月に若者向けの動画メッセージで「イベントやプロジェクトに誘われたら絶対に断らない。飲み会も断らない。断る人は2度と誘われません。私自身、飲み会を絶対に断らない女としてやってきました」と語っていた。動画は24日午後に閲覧ができなくなっている。

現役の総務省幹部11人は懲戒処分となったが、山田氏は昨年9月に総務省を辞職し、現在は特別職の国家公務員であるため、国家公務員倫理規程の適用外だ。内閣官房職員の訓戒等に関する規定では厳重訓戒、または訓告等となるが、「法律に基づく懲戒処分の規定は設けられていない」(坂井学内閣官房副長官)。

山田氏は給与10分の6を一括で自主返納し、会食費用を返金すると、政府に報告。菅首相はこの日、山田氏を厳重注意する一方、「今後とも職務で頑張ってほしい」としている。記者会見場ではなく、参考人招致の場で、どこまで疑惑について語り、説明するのか。まだ接待疑惑の幕引きとはなりそうにない。【大上悟】