「医療は限界 五輪やめて!」「もうカンベン オリンピックむり!」

新型コロナウイルス感染症の患者を受け入れている東京都立川市の立川相互病院が、窓にこんな張り紙をして話題になっている。東京が3度目の緊急事態宣言に入った後の4月30日、立川駅近く、多摩モノレールに面した2階と3階に掲出。通りがかった人の中で思わず見上げたり、携帯などで撮影する人も多く、SNSでも拡散している。この場所は、7月12日に立川市内で予定されている聖火リレーのコースの一部にも面している。

取材に対し、高橋雅哉院長が文書で回答。医療現場の窮状を訴えながら、東京五輪反対表明について説明した。文書によると、同病院は287床、医師90人。昨年4月から今年4月まで242人のコロナ患者を受け入れてきた。5つある一般病棟の1つを改修して専用病棟とし、ICU(集中治療棟)、HCU(準集中治療棟)のうち3床を重症患者用に使用してきた。最近の大阪府の状況もみて、7日からHCUの全16床をコロナの中等症~重症ベッドに転用することも決めた。この影響で「看護スタッフの負担は限界を超える」とし、コロナ以外の患者に対応できる病床も大幅に減少するとしている。

コロナ以外の診療が圧迫される状況は昨年から続いており、救急車の応需率は昨年1~3月が80%だったのに対し、今年1~3月は55%に激減した。体制も「各病棟ともギリギリの人員配置」などとし、職員には1年前から、同居家族以外との会食の禁止、帰省や旅行などの行動制限を徹底しているという。

こうした窮状や五輪開催による感染拡大が懸念される中で、五輪のコロナ対応を巡り看護師や医師の派遣要請、選手らの受け入れ病院確保などの動きも知り「病院としてメッセージを表明する必要を感じた。国公立病院などではこのような意見表明は困難だろうと考え、あえて掲示に踏みきった」と説明。「選手の想像もつかない努力の積み重ね、関係者の開催に向けたご尽力を考えると非常に心苦しく思う」としながらも「しかし現実的に、感染拡大の可能性のある五輪の開催には反対せざるを得ません」と主張している。