安倍晋三前首相(66)が25日、首相退任後、初めて選挙応援でマイクを握り、自民党候補を激励した。

東京都議選告示のこの日、荒川区の尾久八幡神社で行われた崎山知尚前都議の出陣式に参加。境内の“特設ステージ”に立つと、強い雨が約1時間降り続いていた空を見上げ「雨も晴れてきましたね。私は日本で3本の指に入る晴れ男と言われています」と晴れやかな笑顔を見せた。

7月23日に開会式を迎える東京オリンピック(五輪)・パラリンピックの成功も誓った。「いよいよ迫ってきました」と前振り後、集まった高齢者たちに向けて「皆さま1964年のオリンピック、パラリンピックは覚えていますか? 生まれていない方も多いかと思いますが…」。約300人の聴衆の笑いを誘った。

さらに「当時、私はまだ、かわいい小学生。かわいいかどうかは議論があるかと思いますが」と自虐的に話すと笑いが起こった。

「あの時の感動、日本選手の活躍、試合を通して未来を見た夢や希望、勇気。あの瞬間を今の子どもたちにも経験してもらいたい。そんな思いで8年前、誘致に全力を尽くしました。おかげさまで誘致はした」と冗舌に語ったうえで「でもコロナ下にあって成功させていく、これは大変です。何とか成功させることが世界に希望につながっていく、勇気を与えることになるんだろうと思っている。もちろん感染症にしっかり目を凝らしながら、みんなが安心出来る、安全な大会にしていかなくてはいけない」。観覧者からは拍手も沸き起こった。

前回17年の都議選を振り返った時だけは表情が引き締まった。「4年前、残念ながら我が党は惨敗をしました。当時、総裁であった私にとって痛恨の極みでありました」。森友学園、加計学園、豊田真由子衆議院議員の暴言暴行、稲田朋美防衛相の自衛隊発言など、問題が相次いでいた中での都議選だった。7月2日の最終日に、JR秋葉原駅前で街頭演説に立った安倍氏の言葉を打ち消すかのような「安倍ヤメロ~」などの怒号も飛んだ。安倍氏も「演説を邪魔するような行為を自民党は絶対しません。こんな人たちに負けるわけにはいかない」などと応戦したことから「こんな人たち」発言に有権者の不信が募った。

「崎山議員のように経験があって有能な議員を落としてしまった。崎山さん、荒川区の皆さまに対して、本当に申し訳ない気持ち。もう1度、経済対策が必要。経済再生していくように、東京都議と手を組んで、安心出来る、活力のある日本を復活させていきましょう」と力を込めた。