野球漫画「ドカベン」「野球狂の詩」などで人気を集めた漫画家の水島新司さんが10日、肺炎のため東京都内の病院で死去した。82歳だった。水島さんは、20年12月に引退を発表していた。球界内外問わず、プロから子どもたちまで幅広い世代にファンが多かった。

水島さんは58年、新人漫画コンクールに「深夜の客」を投稿し、デビューした。70年には「男どアホウ甲子園」が最初の大ヒット。72年から「野球狂の詩」、「ドカベン」を連載開始。73年からは「あぶさん」とヒットを量産し続けた。

単行本累計203巻で18年6月28日発売号で46年間の終止符がうたれた「ドカベン」シリーズは主人公のスラッガー山田太郎、サブマリン里中智、悪球打ちの岩鬼正美、秘打を生む殿馬一人など個性豊かな選手で人気を博した。彼らを参考にしたプロ野球選手も数多い。校名の「明訓」は水島さんが憧れていた新潟明訓高がモデル。甲子園でも作品を読んでルールを勉強し、冷静に得点を奪った選手もいた。「野球狂の詩」では女子プロ野球選手・水原勇気が登場。吉田えり、片岡安祐美ら女性プロ選手を目指すきっかけを与えた。

また、草野球チームを主宰し、投手として200勝以上を挙げるなど、プレーでも野球を愛した。

◆水島新司(みずしま・しんじ)1939年(昭14)4月10日、新潟県生まれ。58年にデビュー作を投稿した後、「男どアホウ甲子園」「野球狂の詩」「ドカベン」「あぶさん」など、野球漫画の第一人者。07年に日本漫画家協会賞文部科学大臣賞。05年に紫綬褒章、14年には旭日小綬章受章。趣味は野球、将棋。好きな球団は南海ホークス(現ソフトバンク)。北信越BCリーグのアドバイザーも経験。マスターズリーグの福岡ドンタクズにも入団し、登録名「あぶさん」で背番号90。血液型B。元タレント水島新太郎は長男。