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本紙記者、悪石島でずぶぬれ皆既日食体験

 前代未聞? 22日は、猛烈な悪天候に「避難勧告」が出る中の「ずぶぬれ皆既日食体験」となった。有人エリア最長の6分25秒観測できる(はずだった)、鹿児島県トカラ列島・悪石島。なぜか本番約30分前に天気が急変。破壊的な豪雨&強風&雷のほか、竜巻の危険まで高まったため、みな全身びしょぬれで体育館の中へダッシュ。そこで「真っ暗」を体験する、想定外の展開となった。確かに太陽は見えなかった。でも、間違いなく記憶に残る「世紀の天体ショー」。“トカラの洗礼”は最後まで強烈だった。

 歴史的な日なのに、世界が注目する悪石島は朝からどんより曇っていた。太陽はまったく見えない。だが悪石島小中学校校庭に集まったツアー参加者や関係者らは口々に、「ボクは晴れ男ですから」などとあまり根拠のない楽観視をして“奇跡”を期待していた。

 しかし、皆既日食開始時刻(午前10時53分)の約30分前、突然妙な冷風が吹き始め、海の方から、竜のような形をした不気味な雲が立ち上ってきた。直後、すさまじい豪雨が降り始め、雷が光り、ごう音がとどろくと、そうした楽観は一瞬で粉砕された。

 雨はじゅうたん爆撃のように降り注ぎ、強風が吹き荒れる。傘は折れそうで開けない。みな一瞬で全身ずぶぬれ。水不足でシャワーを自由に使えないため、ヤケクソ気味に豪雨で洗髪したりしたが、そのうちそんな余裕はなくなる事態に。

 同10時40分ごろ、雲を見た島の自治会長や小中学校校長が「竜巻発生の恐れがある」と避難を助言。それを受け、ツアースタッフらが数百人の観測者らに対し「学校の体育館に避難してください」と避難勧告を出したのだ。本番直前にこの天候…「天」の嫌がらせか、はたまたイタズラか? あるスタッフは「6日に入島したが、こんな雨が降ったのは、今日が初めて…」と苦笑した。

 豪雨、強風、雷そして竜巻の恐怖の中、次々体育館に避難する観測者ら。雨が収まる気配はない。観測者らは体育館の入り口付近に固まり、徐々に薄暗くなる空を見上げるしかなかった。「あと20秒、10秒…」。スタッフの声。午前10時53分。いきなりという感じですべてが真っ暗になった。

 「うわ~ほんとに真っ暗だ」と感動の声。自然に大きな拍手が起きた。豪雨など関係ない。「絶海の孤島」の広い空が、神秘的なまでに黒一色に、水平線まで染まっているという現実があった。同59分、皆既日食が終わると一気に明るくなった。再び拍手が起きた。

 しばらくすると、急に雨が小降りに。多くの人が「天」に対し「おいおい」と突っ込みを入れたに違いない。結局、「最長の島」では1度も太陽は姿を見せなかった。しかし「避難勧告の中観測する」という、記憶に残る、強烈な「世紀の天体ショー」体験になったことだけは間違いない。

 そういえば20日の島上陸時にも、小型船が劇的に揺れ、全身ずぶぬれになったばかり。と、愚痴りつつも「大自然の現実」を体感できたことに、妙な満足感はある。ただ未開封のまま手元に残っている「日食グラス」をどうしようか。【広部玄】

 [2009年7月23日18時23分 紙面から]


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