トヨタラグビー部の仙波優さんが交通事故死
昨季社会人ラグビー日本一のトヨタ自動車WTB仙波優(せんば・まさる)さん(25)が27日午前1時ごろ、愛知県豊田市本地町6丁目の市道で乗用車を運転 中、電柱などに激突して即死した。きょう28日には関西社会人リーグの優勝をかけた神戸製鋼との全勝対決を前にした突然の死だった。将来性豊かな選手を失ったラグビー界に衝撃が走った。(写真=今年の2月21日、神鋼戦でプレーする仙波選手)
横滑り7メートル日本のラグビー界を沸かせた快速ウイングが、突然帰らぬ人になった。豊田署の調べによると事故が起きたのは27日午前1時ごろ。仙波さんの運転する車が道路左側のガードレールにぶつかった後、電柱に激突した。仙波さんは頭がい骨骨折で即死状態だった。シートベルトはしていなかったという。ブレーキの跡はなく、横滑りの跡が約7メートル残っていた。同署ではスピードを出し過ぎた可能性があるとみて調べている。
「独走」が代名詞で、日本代表キャップこそないが、関東学院大在学時からパワフルなプレーとたぐいまれなスピードでゲインラインを切り裂き、黄金時代の基礎を築いた。昨季の社会人選手権準決勝の神戸製鋼戦では約70メートルを独走し、トライを演出。181センチ、87キロの体でディフェンスをものともせずに突進し、数々の独走トライを挙げる「トライゲッター」としてファンの注目を浴びた。
チームはこの日午後1時前の新幹線で名古屋から神戸入り後、公園で普段の試合前日と同じ軽い練習をこなした。大きな掛け声は出ていたが、表情は一様に沈んだまま。約40分で終了した。神戸製鋼との決戦を控え、田村監督も「このまま自分たちの持っているものを出せなかったら仙波に悪い」と、試合に向け気持ちの切り替えを強調した。
爆発的なプレースタイルで人気のあった仙波さんの力強い走りはもう見ることはできない。ラグビー界は、次代の担い手をあまりにも悲しい形で失った。
遺族が駆けつける仙波さんの遺体は事故後の27日早朝に愛知県豊田市の豊田署に運ばれ、その後、同市内にあるトヨタ生協メグリアセレモニーホールに安置された。トヨタ自動車本社やラグビー部関係者が集まって対応に当たった。午後3時に会社から知らせを受けた仙波さんの姉綾子さん(29)が愛媛県内の実家から駆けつけて、悲しみの対面をした。同6時半には母ひとみさんが到着したが、ショックからか救急車で近くの病院へ運ばれ点滴を受けた。
平尾GMショック神戸製鋼の選手も、喪章を着けてプレーする。仙波選手の訃報(ふほう)を受けた平尾誠二GM(36)が、関西ラグビー協会・松丸鉄也会長(72)に電話で連絡をとり「神戸製鋼としても哀悼の意を表したいのですが、喪章を着けても問題ないでしょうか」と申し出たという。協会側は了承。「試合で全力を尽くすことが彼へのはなむけになる」と薮木宏之主務(32)は話した。関西リーグ優勝をかけた全勝対決。対戦相手の主力選手の突然の死に、神戸製鋼側も衝撃を隠せなかった。 この日は完全オフだったが、電話で伝え聞いたWTB大畑大介(23)は「急なことで何も分からない。親しい人間がなんで……。何よりもショックです」。 仙波選手とは同じ右WTBの位置で対峙(たいじ)するはずだった。大畑は「(21日の)ワールド戦前に声を掛けてもらったのが最後。対戦を楽しみにしてたのに」と声を詰まらせた。
悔しいですよ…関東学院大時代の恩師、春口広監督(50) 僕にとってはかわいい男でした。こんな形で亡くなるとは信じられない。悔しいですね。これからの選手なのに……。選手たちも動揺しています。これをきちっとするのが僕の役目。淵上(主将)にはすぐ連絡をとって「動揺するな」と伝えました。明日(リーグ戦優勝のかかった中大戦)もしっかりやらせるよう努力します。松山商時代の恩師・渡部正治監督(50) 今年9月に松山に帰ってきた時、松山商のグラウンドで2人で雑談したんですが……。それが最後になってしまいました。神戸製鋼戦を楽しみにしていたのに。こみあげてくるものがあります。
大胆なプレー、繊細な性格悼む ほおを膨らませて、両ヒザを高く上げる独特のフォーム。相手ディフェンスを跳ね飛ばすハンドオフ。グラウンド上では豪快で、だれよりも存在感があった。昨季の社会人選手権決勝では試合終了直前にセービングで相手と交錯。試合後に痛み止めの座薬を使った。だが「恥ずかしいから書くなよ」の一言。豪快、大胆なプレーぶりとはかけ離れた繊細な性格だった。昨秋のW杯アジア予選で日本代表に選出されたが、試合出場は1度もなかった。その後はケガを理由に代表を辞退し続けた。強ジンな体力を武器にした突破は、日本のラグビー界にとって大きな武器となったはず。同僚の日本代表SO広瀬佳司選手(26)も「仙波はボクらとは身体能力が違う」と、一目置いていた。だが仙波さんは「日本代表のラグビーには興味がないから」と、ジャパンに興味を示そうとはしなかった。「なぜ」という問い掛けに「今は自分のチームが大切だから」とはぐらかされた。頼られることを意気に感じる仙波さんだけに、言葉の裏には強い「思い」と「プライド」があったはずだ。真意を聞く機会はもうない。そう思うと残念でならない。合掌。 【ラグビー担当・八反誠】
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