200キロブルベで、メカトラもないのにタイムアウトの危機! でんめおやじことメディア戦略本部石井政己(58)が「#アオバヒドイ」がハッシュタグとなっている、厳しすぎる青葉ブルベの中でも、とびきりきついスーパー山岳コースの「BRM319あおばスーパー200キロ鶴鶴鶴」に参加したが、76キロ地点のPC1でなんと貯金はたった4分。ラスボスの鶴峠が残っているというのに、いきなりの大ピ〜〜ンチ。果たして完走なるか--。…いや、完走はできたんですけどね。それにしても焦った焦った。


標高870メートルの「ラスボス」鶴峠のピーク
標高870メートルの「ラスボス」鶴峠のピーク

【コース】町田市鶴川〜道志みち〜厳道峠〜秋山〜雛鶴峠〜大月〜旧甲州街道〜談合坂SA〜鶴川宿〜鶴峠〜奥多摩湖〜町田市鶴川


BRM319あおばスーパー200キロ鶴鶴鶴のコース
BRM319あおばスーパー200キロ鶴鶴鶴のコース

 コースは町田市の鶴川を出発し、雛鶴峠を越えて大月に向かい、帰りは鶴峠を上って帰るというもの。鶴が3つなので鶴鶴鶴。ただ、峠はこれだけではなく、道志みちから秋山へ向かう厳道峠(がんどうとうげ)、さらにその先の金波美(かなみ)トンネル、旧甲州街道の鳥沢付近から談合沢SA手前までの上り、そして鶴峠手前の田和峠とてんこ盛りで、獲得標高は3500メートルを超える。中でも厳道峠はあり得ない激坂らしい。昨年は反時計回りで行われたが、今年はもっときつい時計回り。余計なストップはせず、グルメもせず、制限時間13時間半の時間内完走が目標だ。


午前5時32分、スタート前のブリーフィング
午前5時32分、スタート前のブリーフィング

 このブルベが行われる前に、悲しい知らせがあった。ブルベの運営、促進を行っている非営利団体のオダックス・ジャパンの稲垣会長の訃報で、3月15日にニュージーランド1200の走行中、トラックに追突され即死したというものだった。この週末に予定されていたブルベは一時、中止の報が流れたが、各主催者の判断により開催されることになった。ブルベ中止はなによりも会長が悲しむことになるのではと、個人的には思う。ブリーフィング前にその報告があおばの代表からあり、スタッフ、参加者全員が黙とうを捧げた。この日のブルベは追悼ブルベであり、安全運転と無事の帰還をいつにも増して肝に銘じた。


【スタート 0キロ 鶴川】午前5時49分


 車検を済ませるとまだ午前5時45分。

「行っていいですよ」

「え、こんなに早くていいの?」

「時間が厳しいですから」

 トータルの距離も6キロ多い206キロだし、フライングスタートは大目に見てくれるようだ。車検後、少し準備して午前5時49分に走り出した。正規のスタートは午前6時なので11分のおまけ貯金。実はこれが後になって大きな意味を持ってくる。


 相模川までは平たんと信号地獄のためトレインで走るが、21キロ地点の宮原交差点を右折すると早くも上り区間が始まる。キューシートにも(あおばらしく)ご丁寧に「ここより山道」と記してある。そして、トレインからは千切れ、あっという間にひとり旅。鳥居の小さな峠や道志みちに入っても次から次へと抜かれる。スタートが先頭付近だったから仕方ないが、凹むなぁ。


午前7時21分、上りに入ると、あっさりと引き離される
午前7時21分、上りに入ると、あっさりと引き離される

午前7時54分、道志みちへ入る
午前7時54分、道志みちへ入る

 35・9キロ地点のコンビニはスルーし、神奈川県側の最高標高まで上り、ぐいーんと気持ち良く下った先の44キロ付近の道志村へ入る手前の両国橋でトイレ休憩。ついでにSOYJOYを補給し、両国橋の先の「超急カーブ」を必死のダンシングで上る。


午前8時16分、両国橋。ここから道志村
午前8時16分、両国橋。ここから道志村

 厳道峠は初の挑戦。事前にネットで調べて見ると「悶絶」「撃沈」「和田峠や子ノ権現も相手にならない」「平均こう配15%」「名前に違わずキツイ」と走る前からめまいがしそうな表現ばかり。だが、距離は2・1キロ、チェックポイントからは1・7キロと短いので気合で何とかなりそうかなと思っていたのだが、実際にいってみると、とんでもない壁が待ち構えていた。


午前8時36分、久保の吊り橋。厳道峠はこの先を右折する
午前8時36分、久保の吊り橋。厳道峠はこの先を右折する

午前8時38分、厳道峠への入口
午前8時38分、厳道峠への入口

 入口は久保の吊り橋の先を右折するのだが、ここにすでに何人かのブルベライダーが休憩していた。チェックポイントはここからたった400メートル先なのに、なぜ止まっているんだろうと不審に思ったが、少し進むとその理由が分かった。こう配15%以上のコンクリート舗装のつづら折りがいきなり目の前に現れた。もうここから激坂が始まるのだ。「なんでこんな坂上らせるんだよ〜」と悲鳴を上げながら必死のダンシング。時速5キロでよろよろと上り、心臓バクバク、息を切らしながらも何とかチェックポイントであるお寺の裏手に回り、標識の前でいったんストップ。ふぅ〜〜、きつ過ぎ。


【チェックポイント 49・3キロ 厳道峠ふもと】午前8時45分(貯金42分)


午前8時45分、厳道峠手前のチェックポイント
午前8時45分、厳道峠手前のチェックポイント

午前8時45分、チェックポイントの証拠写真
午前8時45分、チェックポイントの証拠写真

午前8時47分、チェックポイントに続々到着するブルベライダー
午前8時47分、チェックポイントに続々到着するブルベライダー

 この時点で貯金は42分。道志みちの上りなどを考えれば、自分としてはまずまず。このペースで行けば、PC1には間に合うだろう。できれば談合坂で貯金を1時間ほどにに伸ばし、何か食べたいなとこの時はまだ吞気に考えていた。まさか、この先が時間との戦いになるとはこの時点で想像もしなかった。


 ほかのブルベライダーにこの峠のことを聞いてみると、この先も激坂が続くが、中間あたりで少し緩くなり、最後はまた激坂になるという。「時速5キロを切るから歩いても変わらない」「歩こうか」という声が周辺からちらほらと聞こえてくる。すでにこのチェックポイントへも歩いて上ってきているブルベライダーが何人かいた。


 行けるところまで乗るか。そう思いスタートしようとするのだが、ここは激坂の途中で漕ぎ出しも難しい。いったん下ってクリートをはめてから上り返そうとするが、道幅が狭い上に人が多いのでそういうことをするスペースもない。人が少なくなるのを見計らい、お寺の裏の平たんなところでクリートを入れてUターンし、ようやく発進することができた。


 ブリーフィングで「道幅が狭く、坂での追い越しは気をつけて」と言われた意味が、ここで初めて分かった。みんな時速5キロ前後でふらふらして上っているので、確かに簡単には抜けない。


 ダンシングで少し上ったが、残り1・7キロをこの状態で上り切れそうもない。たぶん足もつるだろう。息も上がってきている。峠は雛鶴峠、鶴峠と残っており、足は残しておきたい。時速は5キロもでていないし、歩いても同じだなどと自分に言い聞かせ、100メートルほど上ったところで早々と諦めて足を付いた。ブルベでは明神峠の先の三国峠以来、2度目の歩き。このときは明神峠を無理して上ったため、後になってかなりきつくなった。この経験が生きたと、前向きに考えよう。


午前8時54分、チェックポイントから少し上っただけの、ここで諦めて足を付いた
午前8時54分、チェックポイントから少し上っただけの、ここで諦めて足を付いた

 歩いていると、後方から「カチャ」というクリートを外す音が何度が聞こえてきた。周辺ではほとんどのブルベライダーが歩いており、自転車にのっているのを見たのはたった2人だった。


午前8時57分、ありえない上りが続く
午前8時57分、ありえない上りが続く

午前8時59分、歩くのもきつい坂を上っていく強者
午前8時59分、歩くのもきつい坂を上っていく強者

午前9時12分、「そんなん分かっとるわい!」と全員が叫んだと思われる「上り勾配あり」の標識
午前9時12分、「そんなん分かっとるわい!」と全員が叫んだと思われる「上り勾配あり」の標識

午前9時12分、延々と続くコンクリートの上り坂
午前9時12分、延々と続くコンクリートの上り坂

 51・0キロ地点の標高805メートル、厳道峠にたどり着いたのは午前9時21分。1・7キロを約30分かけて上ったことになるが、時速3キロ台という数字が表すようにこう配15%超の激坂は歩くのもつらかった。しばらくピークにいたが、見る限りでは全員が歩いて上ってきていた。こういう光景をブルベで見るのは初めて。それだけすさまじい坂だったということだ。


午前9時22分、厳道峠のピーク。ほとんどの人が歩いて上ってきている
午前9時22分、厳道峠のピーク。ほとんどの人が歩いて上ってきている

 厳道峠からの下りもきつい。急坂に加え、落石があったり、砂が浮いていたりと気が抜けない下りが続く。ただ、秋山側は舗装がアスファルトで、下った感じからもこう配は道志側よりは緩めのような気がした。


 このまま下って県道35号に出るのかと思っていたのだが、下り途中のY字交差点を「阿夫利山・金波美峠」という小さな看板に従って左折すると、またきつい上りが始まった。楽はさせない「#アオバヒドイ」の真骨頂だ。


午前9時34分、サイクリングに最適の道だが、上りがきつい
午前9時34分、サイクリングに最適の道だが、上りがきつい

 天気も良く、車も通らず、非常に気持ちのいい道で「これぞサイクリング」という気分だが、坂がねぇ、きつ過ぎ。


午前9時48分、ようやくピークの金波美トンネル到着
午前9時48分、ようやくピークの金波美トンネル到着

 やっとのことで金波美峠(トンネル)に到着。しばらく下りが続き、県道35号に出るところでミスコース。少し手前を左折したようで、後ろに付いていたブルベライダーがあれ? という顔でストップしたので気がつき、数十メートルのロスで済んだ。


 ここから新雛鶴トンネルまでは7キロで、残りの2キロほどがきつい。黙々と上り、何人かに抜かれながら標高650メートルの新雛鶴トンネルに到着。もう坂は十分という感じだが、まだ67・8キロ。そして、坂はまだまだ残っている。


 自転車に乗るときは時計はつけないようにしている。時間にしばられず自分のペースで走りたいので、プライベートのサイクリングでは距離だけ確認しながら走っている。距離とコースで何となく走行時間は分かるし、確認しようと思えばサイコンで確認できる。この日もそうで、サイコンは距離表示のまま走っていた。もちろん、ブルベも終盤になると完走タイムが気になるので時間は確認するのだが、これまでタイムアウトの経験がないし、400キロ以上ならともかく200キロなら大丈夫だろうと、ここまで時間は厳道峠手前のチェックポイントで確認した以外はまったく気にしていなかった。


午前10時40分、新雛鶴トンネル到着
午前10時40分、新雛鶴トンネル到着

 しかし、新雛鶴トンネル到着は午前10時40分。ということは、PC1のクローズ時刻の午前11時8分に間に合うためには、8・9キロを28分で走る必要があったのだ。つまりグロス時速は26キロ。最初は下りだが、途中からは平たんとなり、気を抜けばぎりぎりの時間だ。


 そんなこととはつゆ知らず、のんびりトンネル前で写真を撮り、下りで猛スピードのブルベライダーに抜かれても気にせず、PCへ着くとトイレが空いていたのでゆっくりと用を済ませた。それからアクエリアスとハンバーガーを持ってレジに並び、前の人が1万円札を出してタバコを1箱買っている間にふと振り向いて時計を見たら、午前11時を過ぎていた。「あれ、間に合ってない?」。


 実はこの時、クローズ時間は午前11時0分と思っていたのだ。PCに到着したときもたくさんのブルベライダーがおり、まさか時間ぎりぎりだとは思わなかった。あちゃー、やっちまったか、ブルベ初のタイムアウト。いや、これはこれでいいネタかも。「タイムアウトでも走り抜いた超スーパーな山岳200キロ」というタイトルが浮かんできた。ここまできたら戻るわけにもいかず、走り続けるしかないしね。


 そんなことを思いながらコンビニを出て自転車の所へ向かっていると、何度もブルベで一緒に走っている女性ライダーのMさんが「間に合ったー!」と言いながらほっとした様子で駆け込んできた。「え、間に合った?」と心の中でつぶやき、キューシートを確認すると「11:08」とあった。老眼なので「11:00」と見間違えていたようだ。Mさんに言われなければ、気がつかないままタイムアウトと思って走り続けていただろう。救いの女神のMさんとはこの後、最終PCまで何度も会うことになった。


【PC1 76・7キロ セブンイレブン都留井倉店】午前11時4分(貯金4分)


 ただ、貯金はたった4分。そしてハンバーガーをパクついている間に借金生活へと足を踏み入れることになった。


 リザルトを見ると、午前11時以降の8分間に到着したのは完走した62人のうち13人。20%のライダーがぎりぎり感を味わったようだ。


 ここで重大な事実に気がついた。そういえばスタートは午前6時ではなく、午前5時49分で11分間のおまけ貯金があった。このおかげでセーフとなっただけで、午前6時にスタートしていたら6分、間に合わずにアウトだった。なんとなく複雑な気分だが、ルール違反ではないので、ま、いっか。


 次のチェックポイントの談合坂下りサービスエリアまでは21・3キロ。クローズ時刻は午後0時32分なので、あと1時間28分。富士みちから甲州街道は下り基調だが、旧甲州街道の談合坂手前まではきつい坂が待っており、余裕はあまりない。


 禾生のおみすびのおおみやには目もくれず、下り基調の道もがんがん回して先を急ぐ。


 鳥沢駅を過ぎ、ようやく89・9キロ地点の旧甲州街道との分岐にさしかかったが、目指すY字路の左方向の道は滑り止めのあるとんでもない急坂。前を行くブルベライダーは「ここじゃない」と思って止まったが、ここなんだよね。間違いない。きつい坂をわざわざ選んでいるとしか思えない。やっぱり「#アオバヒドイ」だ。


 こう配10%前後が続く坂を上っていくが、このころから気温が上がり暑くなってきたので、途中でストップ。ジャージーの前をはだけ、グローブを脱いで素手で走ることにした。決してきついからストップしたわけではないと、一応言い訳。


午後0時、県道30号(旧甲州街道)
午後0時、県道30号(旧甲州街道)

午後0時5分、上野原市へ入る
午後0時5分、上野原市へ入る

 上りは3キロぐらいだっただろうか。上野原へ入ってしばらくすると道は下り始め、中央高速にかかる陸橋の先を左へ曲がって談合坂下りSAへと午後0時19分に滑り込む。なんとかセーフ。貯金はPC1から9分増えた。


【チェックポイント 98・0キロ 談合坂SA下り】午後0時19分(貯金13分)


午後0時19分、談合坂SA到着
午後0時19分、談合坂SA到着

 時間があれば何か食べようと思っていたが、貯金13分では長居は出来ない。トイレを済ませ、証拠写真を撮ったら即、出発。


 出てすぐの工事中の迂回路ですこし迷っていると、GPS搭載のブルベライダーに声をかけられ無事にクリア。そのまま鶴川宿まで下り、分かりづらい県道33号へのコースもスムーズに通り抜けた。


 鶴峠までは約20キロ。13キロ地点に田和峠があり、そこからいったん下って再び上り、最後の2キロ弱がきつい。


午後0時43分、県道33号
午後0時43分、県道33号

 一気に上れる気がしないので、刻んでいくか。とりあえずは10キロぐらいかな。


 棡原郵便局の先を左折し、県道18号へ入る。相変わらず坂では抜かれまくりなのだが、自分は時間ぎりぎりで休憩もろくに取らず、補給もままならないで走っているというのに、ここにきてまで次々と抜かれることに驚いた。ほぼ最後尾だと思っていたが、まだ後ろにいたのか。上りが速い人はのんびり休憩でき、補給もしっかり取れるんだろうね。同じ人に何度も抜かれたし、ぶんぶん回しながらすごいスピードで駆け抜けていった人もいた。PCやコンビニ休憩で抜き、坂で抜き返されることの繰り返しだ。


午後0時58分、鶴峠へ向かう県道18号
午後0時58分、鶴峠へ向かう県道18号

 10キロほど上ったところで右手に自販機がある広場があったので、コーラ休憩でひと息つき、SOYJOYとスニッカーズを補給した。


午後1時50分、11%(T_T)
午後1時50分、11%(T_T)

 こう配11%の急坂を上ると田和峠。そして道は一気に下り、平たんな西原の集落を過ぎるとラスボスの鶴峠への登坂が始まる。


 小菅村に入ったところで、PC1で救いの神となったMさんが追いついてきた。トライアスロンもやり、1週間前にはフルマラソンを完走したというMさんは、厳道峠でもピーク直前の急坂までは歩かず上ったという健脚の持ち主。ブルベで一緒に走っている感じではほぼ同じペースなので、ここは2人でピークを目指すことにした。


ピーク直前。よろよろと上る(Mさん撮影。つらい上りなのに撮ってくれた)
ピーク直前。よろよろと上る(Mさん撮影。つらい上りなのに撮ってくれた)

 残り2キロ弱は平均こう配8%を超えるきつい上り。1人だったら足を付いていただろうが、Mさんがいると思うと、付けない。左カーブはダンシングでしのぎ、全身の力を振り絞って、しかしそれでも時速7〜8キロしか出ないが、ふらふらと上っていく。


午後2時38分、ようやく鶴峠制覇
午後2時38分、ようやく鶴峠制覇

 午後2時38分、124・5キロ地点、標高870メートルのラスボス鶴峠をMさんと2人で制覇。Mさんはここでも救いの神となってくれた。


 達成感を少し味わった後、あわただしくウインドブレーカーを着て下山準備。PC2のセブンイレブン古里(こり)店までは30キロ。クローズ時間が午後4時12分なので、あと1時間34分。グロス時速は20キロが必要。ほぼ下りだが、奥多摩湖周辺は平たんなので、ここでもそれほど余裕はない。パンクしたらアウトだ。


午後2時50分、下りの途中にある原始村
午後2時50分、下りの途中にある原始村

 鶴峠から原始村まで一気に下り、国道411号に入ると下り基調のアップダウン。そして奥多摩湖周辺の10キロほどの平たん区間を過ぎると、奥多摩駅の前からまた下りが始まる。平たん区間では時速25キロほどしか出ず、距離も長く感じて少し焦ったが、何とか間に合いそうだ。


【PC2 153・0キロ セブンイレブン古里店】午後3時45分(貯金27分)


 鶴峠からPC2のセブンイレブン古里店までの30キロは1時間7分で到着。貯金はこのブルベ最大の27分となった。残りは42キロで制限時間まであと3時間45分。もう上りはなく、トラブルがなければ完走できるところまでようやく漕ぎ着けた。


 このブルベはたぶんPC2でぎりぎりの時間となることを予想し、終盤でミスコースしないように1週間前に試走していた。その時は青梅から走ってみたのだが、3回ミスコース。しかし、これはキューシートに間違いがあり、ブリーフィングで指摘しようと思っていたら、試走したスタッフによって本番前には修正されていた。具体的に言うと、Y字を道なり直進とあるが、「止まれ」がある方向なので直進とは言わないし、どぶ川手前のサンクスは消えていたし、区間距離が違っているところが数カ所あるなど、キューシート通りに走ると罠にはまることになっていた。


 試走をした事で自信を持って先頭を引くことができ、百草園からはひとり旅でゴールへ向かった。


【ゴール 205・8キロ 三輪コミュニティセンター】午後6時31分(貯金59分)


午後6時16分、ゴール
午後6時16分、ゴール

 ゴールの三輪コミュニティセンターの手前にある公園に着いたのは午後6時16分。ゴール受け付けの会議室は外から窓越しに見えており、散歩中の老婦人が驚いた顔をしながら「これは一体何ですか」と聞いてきた。確かに、派手な格好をしたおじさんたちが集っている光景は、何も知らない人にとっては異様な光景だろうね。ブルベだと言うと説明がややこしくなるので「自転車で200キロを走るイベントをやっているんですよ。ここはゴールの受け付けなんです」と言うと「200キロ? どちらまで?」と聞かれ、鶴鶴鶴なんていっても「はぁ?」と言われるだけだろうから「大月まで行ってきたんです」と答えた。「あなたも行ってきたの」「はい」。話が長くなりそうな気配だったので、「すいません。ゴールの受け付けがありますので」と、途中で切り上げて会議室へ向かったが、ゴールが集中したらしく、大渋滞。結局、「午後6時31分」と書いた紙をもらい、コーラを飲みながら受け付け待ちとなった。


 PC1から時間との戦いとなったが、最終的に貯金は59分。厳道峠を歩いたことでタイムアウトの危機を迎えたが、無理をしなかったことで足は残ったので、鶴峠の上りでつることもなく、最後の平たんでもしっかり回すことができた。年齢と実力を冷静に判断し、あきらめることも肝心だということを学んだブルベだった。


 このブルベでの上り区間は45キロ。「坂は当分見たくない」と思ったが、自走帰宅の途中に急坂があるんだよなぁ…。【メディア戦略本部 石井政己】