「バニラ」で一番美味しいと言われるマンゴー。白い方はココナツ。このサイズが俗に「コッペッタ」と呼ばれるもの。2つの味を注文できる
「バニラ」で一番美味しいと言われるマンゴー。白い方はココナツ。このサイズが俗に「コッペッタ」と呼ばれるもの。2つの味を注文できる

イタリア料理は砂糖を使わない、ゆえ…

 イタリアの風景のひとつとして特徴的なのがスーツを着たビジネスマンでもジェラートを食べながら街歩きをしているところだろうか。

 イタリア料理は一部の地方を除けば基本的に砂糖を使わない。日本の醤油やミリンのように糖分の多い調味料もほとんどない。

 よってカラダのバランスを取るためにも糖分摂取は欠かせないということもあるようだ。

 BAR(バール)でエスプレッソを頼んだら、近くにいたイタリア人のオジサンが勝手にスプーン2杯の砂糖を入れて「コーヒーはこうやって飲むもんだ!」と諭されたという話は都市伝説というわけでもなさそうだ。

 食事の後に必ずデザートを食べるのもその延長だろうか。

3万7000のジェラート店

 職人及び零細企業協会「コンファルティジャナート」によれば、イタリアには実に3万7000店ものジェラート屋があるそうだ。韓国では石を投げればフライドチキン屋にあたるといわれているけど、その数約3万6000店。ファミリーマートとセブンイレブンを合わせても3万7000店舗というから、いかに多いかがわかる。

 近年、そのイタリア・ジェラート事情は急変している。かつては大手の菓子メーカーの売店か、あるいはイタリアらしい家族経営の店舗のどちらかだった。

困ったら「GROM」に行けばいい

 しかし、2003年にオーガニック素材を使ったトリノ発祥の「GROM」(グロム)が登場。おりしもスローフード・ブームで消費者の関心が「無添加」や「自然素材」に関心が集まっていたこともあり、一気に人気沸騰し、イタリア各地にショップができた。その勢いは日本にまで到達しているので、ご存じの方も多いと思う。

 しかし、諸行無常を詠った「平家物語」の例を出すまでもなく、移ろいやすいのが人の心。

 毎日のようにお客さんたちをジェラート屋に案内しているガイドの友人は言うのだ。

 「『GROM』が画期的だったのは、それまでのジェラート屋はフルーツ系かクリーム系か、どちらか一方が美味しいという店がほとんどだったけど、そのどちらも美味しいこと。以前みたいに行列ができていないから、困ったら『GROM』に行っている。ただ、たしかに美味しいけど贅沢な話でこちらもそれに慣れてしまったところはあるかも」

おススメはドゥオモ裏にある「バニラ」

 そんな彼女が今、ミラノでおススメというのがドゥオモ裏にある「Vanilla」(バニラ)だ。

 「『GROM』同様、自然素材がうりで、シチリアのピスタキオ、ピエモンテのミント、イタリア名産のヘーゼルナッツなど、産地にもこだわっているんです。私のおススメはマンゴー。しかし、皮肉なことに店名となっているバニラは日本人の味覚にはあいません(苦笑)」

 それには理由もあるようだ。一般的に日本で「バニラ味」に相当するのはイタリアではFior di latte(フィオル・ディ・ラッテ)、あるいはFior di Panna(フィオル・ディ・パンナ)と呼ばれる。イタリアのジェラートのVaniglia(ヴァニリア=バニラ)は、バニラビーンズがとても強く日本人にはあまり親しみのない味であることが多い。

味見できるサービス

 イタリアのジェラート屋での注文方法は独特で、まず最初にレジで自分が欲しいサイズを申し出てお金を払いレシートをもらう。それを持ってジェラートのカウンターに赴き、まずCONO(コーノ=コーン)かCOPPETTA(コッペッタ=カップ)かを告げて、欲しい味を申し出る(言葉にしなくても指さしすれば伝わる)。また「Posso assaggiare ?(ポッソ・アッサッジャーレ?=味見できる?)と頼めば小さなスプーンで味見をさせてくれる。これはどこも共通していて良いサービスだと思う。

 件の女性によればイタリアで美味しいジェラート屋を見つけるには、もちろんのこと行列ができている店が美味しいに決まっているが、時間帯が大切なのだという。

食事の後に混んでいる店を狙え

 「ズバリ、食後の時間に混んでいるところです。レストランで食事をすると、だいたいはその場でドルチを食べたくなるもの。あえてそれをせずに、外にジェラートを食べに行く。それだけの価値があるというわけです。逆に3時のお茶の時間に混んでいるところは、美味しいからではなく便利な場所にあるからって理由が多いようです」

 ちなみに、最近、ミラノのジェラート屋で人気なのは、パッションフルーツやマンゴーなどのトロピカル系フルーツ味。この食べ比べで美味しい店かどうかが判断できるのだとか?(イタリア・ミラノ在住・新津隆夫。写真も)


Vanilla Gelati Italiani 営業時間 10:00~23:00(年中無休) Via Pattari、2 ang. corso Vittorio Emanuele II 20122 Milano