一滴の水を大切にキャンペーン

 LAは今、500年に1度とも言われる危機的な水不足に直面しています。もともと雨量の少ない乾燥地帯の南カリフォルニアですが、12月~2月終わり頃は雨季にあたり、まとまった雨が降ることで知られています。しかし、近年は温暖化の影響で降水量が激減し、慢性的な干ばつに見舞われています。一部研究者の間ではこのままではカリフォルニア州の水の供給量は1年分しかないと言うデーターまで出ているそうです。東部を縦貫するシエラネバダ山脈は毎年冬には2メートル弱の雪が積もり、その雪解け水が都市部の貴重な水源となっていましたが、近年はほとんどこの山にも雪が積もらなくなってしまっていることもひとつの原因にあげられています。

「LAのために皆で節水しよう!」と呼びかけるポスター
「LAのために皆で節水しよう!」と呼びかけるポスター

干ばつで干上がった湖

 これまで20年ほどLAに住んでいますが、乾燥地帯ながら日常生活で「節水」を意識させるような場面はほとんどありませんでした。雨が降らない夏も青々とした芝生が茂り、ゴルフ場や公園も緑に囲まれているLAでは、スプリンクラーで大量の水を撒くのが当たり前の光景。貧困層地域に行かない限り、どこの家でも手入れされた青々とした芝生が広がっていたものです。しかし今では、枯れた芝生が目に付くようになり、高速道路を走っていれば電光掲示板に「深刻な水不足。水を大切に」と言ったメッセージが流れ、街中を歩いているといたるところに「一滴の水を大切に」と書かれた節水を呼びかけるポスターを見かけます。郊外に足を延ばすと、干ばつで干上がった湖があちらこちらで見ることができるほど深刻化しています。

水不足の深刻化を訴える電光掲示板は高速道路にも
水不足の深刻化を訴える電光掲示板は高速道路にも

 南北に細長いカリフォルニアは、日本よりも面積が広いことで知られています。そのため、州内でも北と南では気候や地形に大きな違いがあり、州全体の降雨量の6割以上が北部山岳地帯に集中し、日本でも販売されているミネラルウォーター「クリスタルガイザー」で知られるマウントシャスタなど、カリフォルニアの水源の7割以上が北部にあります。しかし、州の人口はLAやサンディエゴと言った南部の大都市に集中しているために、南部の都市部で慢性的な水不足が起こっているのです。また南部は農業地帯として知られ、大量の農業灌漑用水が必要とされていることから、地下水の枯渇は20世紀初頭から始まっていたと言われています。

25%の節水を義務付け

 ブラウン州知事は4月、州全体で25%の節水を義務付ける命令を出しました。これにより、一般家庭では庭の植物や芝生への水やりの時間や曜日が指定されたほか、ゴルフ場や公園、農地にいたるまでこれまでのように自由に水を使うことができなくなりました。また、レストランでも客が「水をください」と言わない限り、水を出してはいけない法律までできました。水を無駄遣いした場合は罰金も科していますが、これも期待したほどの効果が出ておらず、このままでは生活用水の確保することも困難になると言われています。

「シャワーは5分以内に済まそう。そうすれば年間5500ガロンもの水が節水できる」と呼びかけるポスター
「シャワーは5分以内に済まそう。そうすれば年間5500ガロンもの水が節水できる」と呼びかけるポスター

 そのため、州が所有する施設では芝生の代わりにサボテンなど乾燥に強い植物を植えたり、洗濯機や食器洗浄機などを節水タイプのものに買い替えた住民には補助金を出す制度も導入されることが検討されています。農地では近隣の工場からの排水を浄化して使用したり、下水の排水を浄化して飲み水にして供給するシステムの導入なども進められているそうです。

 そんな中、新たなビジネスにも注目が集まっています。それは枯れて黄色くなった芝生を緑に見せるスプレー。天然色素を使用した無害な塗料を使用しており、一度塗布すれば3カ月ほど緑色を保つことができるため、昨年頃から売り上げが倍増しているのだそう。それほどまでに、カリフォルニアでは青々した芝生はなくてはならいものなのです。(ロサンゼルスから千歳香奈子。写真も)