砂漠の真ん中にこんなアートがあるなんて信じられますか?
砂漠の真ん中にこんなアートがあるなんて信じられますか?

「救済の山」サルベーションマウンテン

 前コラムではロサンゼルス郊外に、あるひとりの男性が33年間かけて作り上げた塔「ワッツタワー」を紹介しましたが、今回は砂漠の真ん中に作られた魔訶不思議なカラフルな芸術を紹介します。LAから東南へ車で約3時間、避寒地として知られるリゾート地パームスプリングスの南の砂漠の真ん中に突如姿を現すのが、砂漠のオアシスとも言えるサルベーションマウンテン。加藤ミリヤ×清水翔太の「さくらメロディー」のPVやファッション誌などにも度々登場しているので、日本の若い女性の間で近年は人気の観光名所となっているようです。何もない砂漠に作られたカラフルで色鮮やかな山が、そこ。なんでこんなところに、こんな芸術が? と驚くサルベーションマウンテンも、レオナード・ナイト氏と呼ばれる芸術家によって作られた巨大アートです。

レオナード・ナイト氏が寝泊まりしていたと言われるトラックも、こんなに美しくデザインが施されています
レオナード・ナイト氏が寝泊まりしていたと言われるトラックも、こんなに美しくデザインが施されています
God is Love(神は愛)のメッセージがあちらこちらに書かれています
God is Love(神は愛)のメッセージがあちらこちらに書かれています

神は決して裏切らない

 砂漠の中をひたすら走り続けると、「God Never Fails Salvation Mountain(神は決して裏切らない。サラベーションマウンテン)」と書かれたカラフルな看板が出てきます。そして目に飛び込んでくるのは、カラフルなペイントや絵、彫刻で埋め尽くされた丘。言葉で説明するよりも写真を見ていだいた方が良いと思いますが、高さ15メートル、幅45メートルの丘がまるごとキャンパスになっています。あまりの美しさと周囲とのアンバランスさは、CGなの? と目を疑うかもしれませんが、これ本物です。

機材も芸術的ですね~
機材も芸術的ですね~

ボランティアが保存と維持

 サルベーションマウンテンとは直訳すると「救済の山」という意味。その言葉通り、ここは「神の愛」に満ちた場所であり、あらゆる場所にそのメッセージがこめられています。1960年代に「神は愛である」との啓示を受けて宗教に目覚めたと言うナイト氏は、宗教的メッセージを記した気球を上げるために80年代にこの地にやってきたそうですが、上手く上げることができなかったため、サルベーションマウンテンを作ることを考えついたと言われています。以来、ライフラインもままならない砂漠の中で、たったひとりで30年の歳月をかけて神の愛をアートとして表現していったのです。自転車で水を汲みに行き、煉瓦用の泥や粘土と藁を混ぜ合わせて山の表面を作り、そこにペイントで絵を書いていったというナイト氏。残念ながら3年前に他界したそうですが、現在はボランティアが後を引き継ぎ、保存と維持が行われています。

黄色い階段を上ること5分ほどで頂上につきます。「黄色い階段以外の場所は歩かないで」というメッセージが日本語でも書かれています
黄色い階段を上ること5分ほどで頂上につきます。「黄色い階段以外の場所は歩かないで」というメッセージが日本語でも書かれています
ペンキなど資材が並んでいますが、これはすべて寄付でまかなっているのだとか。今もボランティアがこの美しい芸術の保存に努めています
ペンキなど資材が並んでいますが、これはすべて寄付でまかなっているのだとか。今もボランティアがこの美しい芸術の保存に努めています

すべてアート作品として装飾

 サルベーションマウンテンは頂上まで登れるほか、洞窟のようになっている場所から内部に入ることもできます。中には礼拝堂のような場所もあり、とにかくどこを切り取っても絵になります。ナイト氏が住居として使っていたトラックや車なども、すべてアート作品として装飾されていて、ここにいるだけでとっても愛に満ちて幸せな気分になってきます。

洞窟に入るとそこはまた別世界が広がっています
洞窟に入るとそこはまた別世界が広がっています

日帰りツアーでしか行けない

 一生に1度は行きたい場所と言われるサルベーションマウンテンですが、アクセスはとっても大変。車でしか行けない場所ですが、ロサンゼルスなど近隣都市からは日帰りツアーが出ているので、それを利用して行くのもひとつの方法ですよ。(米ロサンゼルスから千歳香奈子。写真も)