ワクワクする感動というよりは、社会科の授業を現場で受けるという感じである。7月に新しく世界遺産に決まった「明治日本の産業革命遺産」のひとつ、福岡県の大牟田市「三池炭鉱・三池港」を見てきた。帰りには北原白秋の故郷の柳川に寄り「舟下り」も体験し。

 飛行機はジェットスターで成田・福岡、最安値で片道4790円を利用。安いのにビックリ! 宿泊は志賀島の休暇村を利用した。

志賀島休暇村の露天風呂。目の前は海…
志賀島休暇村の露天風呂。目の前は海…

           <明治は遠く、もはや遺産・・・>

 要するに石炭を猛烈に掘り出して、日本が近代化工業国に急激に成し遂げる要因となった。そのひとつの跡が、ここ大牟田の三池炭鉱跡である。

 その石炭の掘り出し現場が「坑口」としてそのまま残り、そこには使い古されたトロッコや、ごっつい感じの巻き上げ機がそのまま残っている。

 大きく俯瞰(ふかん)でいえば「明治日本の世界遺産」だが、現地、いや現場で目にするのは、そこで働いていた労働者たちの「汗と泥」の跡でもある。

 労働という肉体の結晶であり「涙の跡」もあるのかもしれない。

 中でも「三池炭鉱宮原坑跡は『三池集治監』(今の刑務所)に収監されていた囚人たちを採炭作業に使い、その厳しい労働から当時は『修羅坑』と呼ばれていました…」と、そんな説明も聞けばなおさらである。 発展と栄光ばかりではない、光も影も含み持っての遺産。だからこそ大事なのだと改めて思う。

 もうひとつ。

 昭和の人間からすれば、ほんの少しまえ、自分の身近で見かけた風景…。例えば、炭鉱跡の野っ原や、使わなくなったトロッコなど…、子どものころ見かけた懐かしいものも、もう今の若い世代には遠いものになってしまったという感慨である。「昭和は懐かしく、大正は遠く」そして「明治は、もう遺産…」なのかもしれない。時の流れの中で、一抹の寂しさである。

三池炭鉱宮原抗跡は、この7月に世界遺産が決まったばかり
三池炭鉱宮原抗跡は、この7月に世界遺産が決まったばかり

           <柳川は舟下りにウナギ&ドジョウ>

 さて、この大牟田から宿(志賀島)にもどる途中に寄ったのが柳川である。

 北原白秋が生まれた町。白秋が愛した川の町。

 江戸時代の「柳川城」の周りを巡るお堀を、船頭さんが竿1本であやつる。

 「どんこ舟」。生活のツールが、今は観光の目玉として定着している。

 船頭さんが、大きな声では言えませんが「アジアの中のベネチアと宣伝しています」とPRしていた。もっと胸を張って言えばいいのに。いい所である。

柳川名物の舟下り。どんこ舟に揺られて旅情を満喫
柳川名物の舟下り。どんこ舟に揺られて旅情を満喫

 予約なしで乗船できて、コースは70分。約1500円。ゆったりと両岸の美しいヤナギ。白いなまこ壁を眺める。 白秋の憂いが、観光客にも伝染して、詩人になった気分だ。

 もうひとつ。この柳川といえば「「鰻の蒸籠(せいろ)蒸し」と「柳川鍋」が有名だ。

 焼き上がったウナギを甘辛いタレをからめたご飯の上に載せ、もう一度蒸す。そして錦糸卵。これが蒸籠蒸し。柳川には20軒を越える鰻屋がある。

今回は国の名勝にも指定された料亭「御花」の鑑賞式の庭園を見ながらの鰻。ちょうど紫陽花がきれいな時期だった。

 余談ですが、どじょう鍋を、なぜ「柳川」と呼ぶか? 観光課の人に尋ねると諸説あって、ひとつは江戸の食べ物屋に「柳川屋」さんがあって、そこで「どじょう鍋」を出した。それが評判を呼び、そう呼ぶようになった。

 また柳川の素焼き鍋「蒲池(かまち)焼き」をつかって、どじょう鍋を食べる人を全国各地で見て、「柳川鍋」と呼ぶようになった…、などなど。単純にこの地「柳川」の郷土料理から…、というわけでもないようである。

 柳川は 白秋とふたり どじょう鍋   

柳川では「ウナギの蒸籠」も有名
柳川では「ウナギの蒸籠」も有名

               <志賀島は金印温泉風呂>

 1泊した志賀島は福岡市中心から東に突き出した「海の中道」を30分ほどは走ると到着する。陸続きの島。周囲11キロのリゾートアイランド。

 金印が見つかった島として教科書にも登場する。その場所は現在、金印公園として、記念碑が博多湾を見下ろすように建っている。1784年(天明4)、地元のお百姓さんが農作業中に見つけたというこの印鑑。後漢の光武帝か贈られたものが、何故、ここにあったのか? 歴史はロマンである。

志賀島金印公園のモニュメント
志賀島金印公園のモニュメント

 そして、ロマンばかりではない。ここには玄界灘のおいしい魚、温泉がある。泊まったのが「休暇村志賀島」。目の前が青々と広がるビーチ。泳いだ後にゆったりと温泉を楽しむこともできる。

 食事は「ライブキッチン」。刺し身も、てんぷらもその場で調理。頂いた中で特においしかったのがヤリイカの活き作り。これが、大きい! 新鮮!旨い!の3拍子。

 日本酒を冷やでグビリ、グビリとやって…。

 さて、もう一度、潮騒と星空の露天風呂へ--。

休暇村ではヤリイカの刺身が絶品
休暇村ではヤリイカの刺身が絶品

◆メモ

成田・福岡はジェットスターを利用。最安値で片道4790円。

休暇村 志賀島 電話092・603・6631。

福岡市観光振興課 電話092・733・5933。

 【馬場龍彦】