相変わらず人気の高い北陸新幹線、そして金沢の観光-。今回の旅は、少しその先へ向かった。能登半島である。渚(なぎさ)のドライブウエーで有名な「千里浜(ちりはま)」。旅行サイトの「トリップアドバイザー」で昨年は国内のベストビーチにも選ばれた。春待つ海の波音でも聞いてみようか? 七尾線に乗り換えて1泊2日の旅である。


砂浜のドライブが人気の千里浜。8キロのロングドライブが楽しめる砂浜は日本でここだけ
砂浜のドライブが人気の千里浜。8キロのロングドライブが楽しめる砂浜は日本でここだけ

全長8キロ 渚のドライブウェー「千里浜」


 東京駅を午前8時36分の北陸新幹線。金沢に着いたのが11時6分。そこからローカル線に乗り換え、目的地の羽咋(はくい)駅到着が11時56分である。昼飯前の到着。

 羽咋の今夜の宿は「休暇村 能登千里浜」に決めてある。駅から車で7分。

 取りあえずは浜に向かう。宿から3分だ。

 「全長8キロもの海岸。初めて来た時は、ワァ~という開放感、気持ち良さに圧倒されましたね」(休暇村・宮本寛之さん)。

 なるほど幅30メートルほどの砂浜が、ほぼ真っすぐにどこまでも延びる。

 サワサワと春の波が時にやさしく、時に大きく寄せては返す。そして波打ち際でのドライブは、潮風が断然、気持ち良いのである。

 全国でもこんなに波際を長く走れる浜はない。砂粒が細かく、海水を含んで引き締まりが良く4WDでなくても普通車でも悠々。バスでも走行OK。ちなみに私は、宿のワンボックスカーの助手席の人である…。

 名古屋、群馬、三重…、他県ナンバーの車も多く走っている。

 「夏休みなどでなければ、平日の午後、基本的にすいていますよ」

 夕刻。夕日が水平線に落ちるころ、もう1度、海岸線に出てみる。

 視界の中に1組の中年夫婦が肩を寄せて歩く姿が見えた。

 砂浜には、幾本もの車の轍(わだち)。そして無数の小さな貝殻が散らばる。あとは何もない。カモメの鳴く声が聞こえるだけである。

 海と浜、そして夕景。自然の大パノラマは、旅人を詩人にしてゆく。

 中年の夫婦に感想を聞く。

 「長野から来ました。思ってた以上に雄大な砂浜。夕日もきれい。車? 砂で汚れちゃいけないと思って置いてきました。でも歩いてもすてきな浜ですね」とご主人。

 夕暮れの浜に消えていく中年夫婦の後ろ姿も、なかなかすてき。

 夏に向かって人出はどんどん増え、ピークの夏休みごろは、砂浜にはズラリと車が並ぶという。その時は、きっと別の景色なのだろう…。

 日が落ちていくにつれ、空の色も紫から赤に変わっていった。海面も空気までも赤く染まっていく。

 波際で遊ぶカモメもそろそろ家路へと飛び立つころか…。


七尾城跡は雰囲気満点。能登島など見下ろす景観も抜群
七尾城跡は雰囲気満点。能登島など見下ろす景観も抜群

 2日目は、朝から能登半島を北へ北へと巡った。七尾城跡~輪島朝市~千枚田~「道の駅 すず塩田(えんでん)村」-。半島の先端まで足を延ばした。

 日本海の海岸線を走ればどこも景観は素晴らしく楽しめたが、個人的には「七尾城跡」が一番良かった。

 七尾城は能登国の守護・畠山氏の山城。それを上杉謙信が1577年(天正5)に落としている。

 途中まで車で上がり、降りて10分ほど徒歩で登っていく。見事な石垣が山道を飾る。

 本丸跡にたどり着けば、素晴らしい見晴らしが待っていた。和倉温泉、能登島などが一気に広がる。気分爽快だった。

 輪島の朝市は日本3大朝市の中でも代表格。メインストリートの「朝市通り」に、おばちゃんたち1人1人の「城」が立ち上がり、干物、野菜、衣料品など、ありとあらゆるものが並んでいた。

 この「朝市通り」からちょっとはずれて、いろは橋のたもとに連続テレビ小説「まれ」の「輪島ドラマ記念館」が昨年4月にオープンしていた。

 中に入ってみると「サロンはる」や「朝市食堂まいもん」のセットなど、そのままに展示してある。こぢんまりしたスペースだが、コーヒー(有料)を飲んで一休みにはちょうど良かった。

 500メートルほど離れて「輪島キリコ会館」(入場料620円)。数メートルから十数メートルまでもあるキリコが展示してある。キリコ(切籠)とは巨大な灯籠といってもいいかもしれない。能登では7月から10月にかけてさまざまな地域でこのキリコを担いで祭りが盛大に行われる。ずらりと収納したキリコ。祭りのイメージが膨らみ、その季節にはもう1度、訪ねてみたくなるのである。【馬場龍彦】

輪島市内にある「キリコ会館」。祭りで担がれる巨大キリコがズラリと並んで壮観
輪島市内にある「キリコ会館」。祭りで担がれる巨大キリコがズラリと並んで壮観

「道の駅」で塩づくり体験を

 能登半島の先端、珠洲市の「道の駅 すず塩田村」も人気スポットのひとつになっている。

 昭和30年代中ごろまでは、この地一帯は塩の産地として100軒を超える塩づくりの家があったが、燃料費の高騰や需要の低下でたった1軒までに激減した。

 それが2008年(平20)に揚げ浜式の製塩法が「重要無形民俗文化財」に指定され、さらに、朝ドラ「まれ」の影響もあって、今は大事な観光資源になった。「塩づくりの体験学習」もこの道の駅で行われている。

 浜士(はまじ)の登谷良一さんによれば「水くみ3年、水まき10年といわれています。歴史ある製法を身近に感じてもらえるいい機会。大いにチャレンジしてみてほしい」。

 ちなみにここでつくった塩は50グラム入りが400円。1人3袋までの限定で売られている。なめてみたが、味はまろやか。塩辛いのに甘いというか、つぶつぶが大きいようで存在感が違うのである。

珠洲市にある「すず塩田村」は人気の観光スポット。右端は浜士の登谷さん
珠洲市にある「すず塩田村」は人気の観光スポット。右端は浜士の登谷さん

これからが旬です 休暇村「天然フグ」

 能登半島の今の季節のうまいもの? そのひとつが「天然フグ」!

 フグというと冬のイメージが強いが、能登は春から夏にかけ産卵で天然フグが回遊してくる。

 そのため白子をたっぷり持ったフグが取れるとか。実は石川県は天然フグの漁獲量がここ4年間、全国1位を記録している。

 今回宿泊した「休暇村 能登千里浜」では、この旬のフグを4月から6月いっぱい新メニュー「天然能登ふぐ会席」として提供する。

 一足先に、試食したが、ヒレ酒に始まり前菜3種盛り、刺し身、焼きフグ、フグの唐揚げ、フグちり鍋、雑炊と…フグ・フグ・フグのフルコースである。

 刺し身は真フグとトラフグ2種類が大皿に並び、その食べ比べも楽しめた。

 料理長の赤塚貴久麻さんは「歯応えなら真フグ。トラは王者の味わいというところです…」と自信の笑み。

 白子焼きも濃厚な味がプルン、プルンと喉に落ちていった。


 ◆休暇村 能登千里浜 一昨年の夏に「和モダン」をテーマにリニューアルオープン。全67室。千里浜の自然と掛け流し温泉が楽しめる。天文台、キャンプ場もある。羽咋市羽咋町オ70。☎0767・22・4121。

こらからがシーズンという能登のフグ。「休暇村 能登千里浜」では4月からメニューに
こらからがシーズンという能登のフグ。「休暇村 能登千里浜」では4月からメニューに
能登半島マップ
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