宮城・閖上(ゆりあげ)のヒラメが面白い。ほとんどが50センチオーバー。取材した19日は、昨年から始めたばかりの釣り人ばかり。この日がヒラメデビューの阿部克哉クン(13)は、57センチ(約1・5キロ)の大物を釣り上げた。しかし、閖上の海はそれでは終わらない。うれしい外道やヒラメもどんどんサイズアップして…みちのく海釣り、ダイナミックだぜ!

 克哉クン、最初は緊張していた。漁場は、閖上港から約30分。水深は30~40メートル。中学2年の克哉クンでも手巻きリールで十分対応できる。昨年、船釣りデビューした。

 克哉クン 昨年はカレイ釣りでした。もう、いっぱい釣れた。船釣り、楽しい。ヒラメは初めてだけど、釣りますよ、釣る!

 宮城県の県魚はカレイ。県内でも沖にカレイ用の大型魚礁を埋め込んだり、カレイの釣りクラブが無数にあったり、全国有数の「カレイ県」として知られている。

 一方、茨城や千葉を中心とする関東で大人気のヒラメは、宮城では釣り方も含めて、まだまだ開発途上の釣りものだ。この日も、克哉クンが初体験、残りの7人は昨年から始めたばかり。生きたイワシを泳がせて釣る豪快さが大ウケして、謙信丸ではリピーターが続出しているという。

 佐藤太船長(37)は「釣れると、だいたい50センチ以上。デカいから、釣りごたえもバッチリなんですよ。そこが人気の理由かなぁ」と話す。東日本大震災から4年半、港周辺には建物はまだ少ないが、しっかりした護岸とかさ上げされた防潮堤も着々とできあがってきた。釣り環境はしっかりと復興してきている。

 克哉クンの緊張がいきなりとけた。仲間の鈴木一輝さん(40)が投入後すぐ、43センチを釣り上げた。その直後に克哉クンのサオがギュン、と引き込まれた。ロッドキーパーではなく、サオを握っていたので食いついた瞬間のガツガツガツ、すぐに分かった。

 父真木(まさき)さん(34)から「慌てるなよ、しっかり食いつくまで待てよぉ」とのアドバイス。真剣なまなざしでサオ先を凝視しているとググンとサオが弓なりになる。力強く克哉クンが合わせると、さらに下に引っ張られた。歯を食いしばってリールを巻くと、ヒラメが上がってきた。50センチ。グッドサイズだ。

 克哉クン 分かんないうちに釣れた。もっと、ヒラメの引きを味わいたい。うれしいけど、次、釣る。

 直後に真木さんが父親の貫禄をみせて53センチを釣り上げた。だが、克哉クンは負けていなかった。途中、リールが巻けないぐらいの強烈なアタリが出た。タモ網を構えた真木さんもビックリした。なんと、57センチ。

 克哉クン うわぁ~、手が…両手が…しびれたまんまだ。スゴい!

 鈴木さんも大物を釣り上げたが、56センチ。船内ではバラシも多かった。仲乗りの謙次船長(74)は「みんな、合わせるのが早いんだ。せっかちではダメだっぺ。じっくり待って、ヒラメにイワシを食わせねば」。

 そのアドバイスが功を奏したのか、克哉クンとは逆側の右舷でヒットが連発した。笹森亮さん(45)は58センチで「ガッツリ入りましたね。大きなヒラメだ」と大喜び。さらに市村敏道さん(41)が63センチを釣り上げ「こんなに大きいのが釣れるなんて、もうビックリ」と目を丸くした。

 外道も小林弘治さん(46)がイシナギ、高橋利夫さん(47)はワラサをキャッチした。同乗したタコボウズ記者は、突然ガツンとの衝撃があって、止まらない。リールに巻いた350メートルが出きった。そこで動きが再びストップ。ポンピングでゆっくり巻いて残り5メートル。寄せようと思ったそのとき、プッチーン…一体なんだったのか、気になる。

 気を取り直して、じっくり待った。サオ先が海に引き込まれて、ゆっくり、大きく合わせた。56センチ、そこそこ大きい。満足。

 最後に謙次船長のサオが曲がった。75センチの大ビラメだ。重量は約4・1キロ。「待てば、釣れるんだ」と謙次船長は再度繰り返した。何がいるか分からない。ヒラメも外道も、閖上ならとんでもないモンスターに出会えるかもしれない。【寺沢卓】

 ▼宿 宮城・閖上「謙信丸」【電話】022・398・4718。ヒラメ釣り乗り合いは午前5時出船で、エサ付きで1万円。要予約。交通は、東京方面からは東北道・仙台南インターから仙台南部道路を経由して、仙台若林JCTを空港方面に進み、仙台東部道路に入り名取インターで降りて閖上港へ。