キスの総匹数を競う「第36回G杯争奪全日本がま投(キス)選手権」(主催・株式会社がまかつ)が4、5日、徳島市の小松海岸で行われ、地区予選を勝ち抜いた36選手(シード選手含む)が参加した。決勝戦では6選手が90分間を戦い、香川勇治選手(野積海岸)が5匹を釣り上げ、初優勝を飾った。食いの渋い中、遠投で狭い範囲を集中的に攻めて見事に栄冠を手にした。

 “7色へのこだわり”が、香川選手に初優勝を運んできた。「勝てると思っていなかったので、とてもうれしいです。決勝戦は(遠くへ)投げた方がいいんじゃないかと思って、目いっぱい投げました」と笑顔で振り返った。

 2ケタ釣果が続出した予選とは打って変わり、6選手で行われた午後0時20分からの決勝戦はキスの食いが渋った。1投にかける時間も長くなり、少ない投数でいかに多く釣り上げられるかの勝負。香川選手は、自分を信じて遠投にチャレンジ。2日前の試し釣りでよく釣れた位置に入ってほぼ動かず、石ゴカイをエサに7色(約150~175メートル)を狙ってキャスティング。約25メートルの狭い範囲を攻め続けた。開始20分で2匹を掛けると、他の選手が場所を替えて攻めるのを見ながら、ペースを維持して着実に1匹ずつ加えて計5匹。名手たちによるシビアな戦いを抜け出した。

 決勝戦の遠投作戦は、予選での大当たりがきっかけだった。どの距離を攻めるか悩み、2回戦までで計7匹。予選落ちのピンチとなり、3回戦は思い切って遠投を選択。すると4連、4連、3連、2連と最初の4投で13匹をゲット。一気に形勢をひっくり返しC組を2位で突破。「決勝も投げるしかない」と決めた。7色半投げて7色のエリアを丁寧に探った。かけ上がりが2カ所あり、止めて少し待ち、動かして、また止めて待つ動作を繰り返した。飛距離はほぼ自分の限界。投げ続けて疲れ、距離が落ちると、ハリ数を8本→6本→4本と減らし負担を軽くして対応。足がつりそうになりながらも、7色の飛距離を保った。

 G杯キスの全国大会は3度目の出場で、決勝戦は初めてだった。前夜祭では、徳島名物“阿波踊り”を見て、自らも踊りリラックス。キス釣り歴20年のベテランが、表彰台のてっぺんを射止めた。【高垣誠】

 ◆香川勇治(かがわ・ゆうじ)1963年(昭38)8月10日、宮城県大崎市生まれ、52歳。同市在住。農業。投げ釣り歴20年。石巻サーフ所属。神奈川・湘南、山形・酒田への釣行が多い。

 ◆経過 予選は12人ずつA~C組に分かれ3回戦(各90分)を行った。午前5時50分からスタートし、過去3大会の優勝者3人が同組となったA組では、大野正浩選手(福田海岸)が3回戦すべて2ケタの計39匹でダントツ。B組は石黒博士選手(福田海岸)が3回戦で12匹、C組でも香川選手が13匹を釣って逆転で決勝戦に進出した。2ケタ釣果も目立ち「かなり厳しいのでは」という大会前の予想を覆した。だが、午後0時20分から90分間行われた決勝戦は、一転して食い渋った。小島選手が1投目で2匹釣るなどしたが、後が続かず、遠投で着実に掛けた香川選手が5匹を釣り初優勝を飾った。