こんにちは。昨年11月から釣り担当になった新人の松尾幸之介です。2度目の登場となりました。今回は横浜市にある海上保安庁第3管区海上保安本部にて、ライフジャケット着用体験会に参加してきました! 釣りをはじめ、海のレジャーは楽しさであふれています。しかし、いざという時のために備えは必要です。そのひとつがライフジャケット。その重要性を身をもって体感してきたので、みなさんもぜひ参考にしてください。

 会場は海上保安本部の特殊救難隊ら潜水士のみなさんが実際の訓練で使用する屋内プール。海上保安本部といえば、そう、あの映画でも有名な「海猿」だ。建物のあちこちには映画のポスターが張ってあり、少し興奮してしまった。このプール、水深が2・5メートルと深いだけでなく、波や海上を飛ぶヘリコプターの風を忠実に再現することもできるという。

 はやる気持ちを抑えつつ、まずは教室でライフジャケットに関する講義を受けた。自分の身を守るには正しい知識と対応を身につけることが重要だ。もし海に落ちても、焦らずに「浮いて待つ」こと。その時にライフジャケットを着用していれば生存率は79%にもなるという。つけていなければ生存率は53%だ。助けを呼べるよう、防水パックなどに入れた携帯電話を持つこともポイント。逆に海に落ちた人を目撃した際は、まず冷静に118番通報をする。そしてロープなどに結んだクーラーボックスなどの浮体を投げて救助を試みる。どんなに泳ぎに自信があっても、助けようと海に入ることはご法度だ。

 講義が終わり、いざプールへ。と、その前に、同本部警備救難部の佐々木将さんからジャケットの種類について説明が行われた。暖かいダウン型やウエストポーチ型、水を感知して自動膨張するものもあるという。佐々木さんのおすすめはベストタイプ。これが一番楽に浮くことができるそうだ。

 何ごとも経験と、自動膨張するウエストポーチ型をつけてプールへ飛び込んだ。人工的に作り出した60センチの波と10メートルの風が襲う中、「プシュー」という音を立てて、みるみるうちに膨らんだライフジャケットに体を包み込まれた。頭は完全に水面から出て、息もしやすい。これなら長時間浮いていられそうだ。

 ライフジャケットなしの状態も体験した。バランスが取りづらく、顔を水面に出すのが精いっぱい。波と風によって顔に水がかかるので油断していられない。「本物の海では大変だ」。そう感じた。

 一般参加したフードコーディネーターの古谷しほさんは「泳げないんです」と体験前に不安を口にしていた。だが不安とは裏腹に、ライフジャケットをつけて飛び込むと、楽々と背浮きをきめてみせた。「恐怖心はあったが、勉強になった。“海猿”の方もずっと声をかけてくれて、安心感があった」と笑顔だった。

 母親と一緒に参加した小学3年の小野塚拓巳君と梨菜ちゃん(6)も元気に体験を楽しんだ。2人とも水泳を習っているそうだ。海猿に憧れているという拓巳君は「楽しかった。海猿はかっこよかった」と目を輝かせていた。梨菜ちゃんも「もっと泳ぎたかった」とまったく恐怖心はない様子だ。

 佐々木さんによると、海に落ちた場合の生存率に泳力の差はほとんど関係なく、「最後はメンタルの強さです」と話す。救助まで浮き続けていられるかが重要で、そのためにもライフジャケットは必要なのだという。

 釣り歴わずか数カ月だが、今まで何げなくつけていたライフジャケット。体験会ではその大事さをあらためて教えられた。みなさんも、釣りに出かける際は必ずライフジャケット着用を!【松尾幸之介】

 ◆ライフジャケット着用体験会 3管のマリンレジャー安全推進室が主体となり、釣りなどレジャー中の、ライフジャケットの有効性への理解を深めてもらうことを目的として開催。主に釣りジャーナリストなどを対象に、講義やライフジャケット着用体験、ライフジャケットなしの着衣水中転落体験などを行う。

 ◆118番 海上における事件・事故の緊急通報用電話番号。警察の110番や消防の119番と同じ3ケタで、覚えやすくした。海上保安庁が2000年5月1日から運用開始。