念願の優勝を引き寄せた。「2016日刊スポーツ・フィッシング・サーキット」船釣りブロックの内房カワハギ大会(参加113人)が10日、千葉・金谷を本部に保田と2地区の合同大会で開催された。毎年上位に顔を出す鶴岡克則さん(42=君津市)が26匹を釣り上げて、初優勝の栄冠に輝いた。

 どんな大会に出場しても、鶴岡さんの周囲では笑い声が絶えない。「楽しく釣りをしたい。それだけなんですけどね」と照れて笑う。意外にも、日刊スポーツのカワハギ大会は初優勝となる。

 「このタイトルが欲しかった。スゴい腕前の人も、ビギナーも一緒に楽しめる大会だからこそ、1度は優勝したかった。いつもはやらないんだけど、久しぶりにプラしちゃいました」と口元をキッ、と結んだ。

 「プラ」とは、試し釣り(英語でプラクティス)のことだ。「鶴岡は天才だから、器用になんでもできちゃうんだよ」などとカワハギ釣りの仲間に言われている。でも、鶴岡さんにはおごりはなかった。「初心に帰って、ちゃんと内房のカワハギと向き合わないといけない」と心に刻み込んで「プラ」に2回も入った。

 結果、底に根のある周辺には群れたカワハギが底から浮いていることが分かった。このカワハギを「根こそぎ釣り切る」作戦を立てた。幅広く仕掛けを投げて、カーブしながら落ちていく途中のアタリで掛けていく。仕掛けには均等に4つのビーズを結びつけて、宙層で目立たせることに頭をひねってみた。

 もう1つ戦略を考えていた。「まだ、カワハギは本気を出していない」と分析した。速い動きにはついてこられない。ならばカワハギのペースに寄り添うことにした。投げて広く誘うのとは逆で、船下に落としてサオ先に神経を集中させて、ゆっくりではあるが動きを止めずに誘い続ける。

 「イメージとしてカワハギを置き去りにするんじゃなくて、カワハギに興味をもたせる。で、止めるところはビシッ、と止めて、カワハギのアタリを誘う、待つ、辛抱する」と指を震わせた。不得意な縦の釣りでこれまで目をつぶってきたが、苦手にも逃げずに組み合った。

 試合では前半の風と波が残る状態で、広くさぐって根こそぎ釣り切るパターンで18匹。風がピタリとやんで、ベタナギになってきて縦攻略に切り替えて8匹を積み重ねた。「2つの戦略が合致した。試合運びにこだわって勝てた。メチャクチャうれしい」と目尻を下げた。

 小学2年から始めたのはブラックバスだった。父親の海釣り好きに引っ張られて、8年前にカワハギに手を染めた。当時、この大会で2連覇したホーリーこと堀江晴夫さん(52)と激しくデッドヒートして「鶴岡くんと張り合えたから連覇できた」と言わせた。

 来年はその連覇が懸かる。「まだ堀江さんだけでしょ、2連覇。だったらしますよ」と鶴岡さんは胸を張って2年連続の栄冠奪取を宣言した。【寺沢卓】