東京湾年末恒例のマダコ釣りが12月1日から富津「みや川丸」でスタートした。ゆでるとまっ赤になることもあって「もう、いーくつ寝ると」訪れる正月の食卓のレギュラーとしても期待されるタコ。初心者でも「テンポ」があえば、次々にキャッチできる。タコボウズ記者が“ともぐい”いや“ともづり”にいってきた。

 「タコ釣り」とはいうが、これ、向きの逆さまな「タコあげ」に近い。そう正月になると大空を舞い飛ぶ「タコ(凧)」をあげる動作によく似ているのだ。

 なにしろ、サオを使わない。凧糸の材質をさらに硬くした「渋糸」が巻いてある「糸巻き」と、妙な形をしたオモリとハリがくっついて、イシガニがしばられている「てんや仕掛け」を渡される。

 安心してください。料金請求はされません。糸巻きも仕掛けも乗船代の中に入ってます。

 糸巻き側にあるスナップを「カチッ」と開いて、仕掛け側に引っ掛けて、また「カチッ」として閉じる。これで準備終了だ。ものの5秒で終了だ。東京湾に数ある釣りものの中でも、最も準備に時間の掛からない釣りだ。

 釣る現場は、富津岬の南側だ。確認できるなら、いや、ちょっと千葉県の地図を見てください。神奈川県側にカジキマグロのツノのように伸びているのが富津岬です。その南側がマダコエリア、不思議なもので、岬の北側は11月まで実施していたイイダコが生息するエリアだ。タコはタコなりに“国境”みたいなものを引いているのかもしれませんね。

 さて、マダコを釣る場所は水深10メートル前後の底。仕掛けにはオモリがついているので、仕掛けを投入するとゴツッ、と手に伝わる感触で底に仕掛けが落ちたことがわかる。ちなみに説明が遅れたが、これはじかに手で渋糸を握って、手で誘って、手で巻き上げて、マダコを引っ捕らえる。原始的でワイルドで、さらに初心者にもできちゃう釣りだ。

 ここで注意したいのは、マダコを「釣る」のではなく「乗せる」のだ。マダコはイシガニが大好物。誘いはオモリで底を「トントン」と小突く。ハリはカーブしているので、ロッキングチェアがゆらゆら動いているようなアクションをイメージしてもらえたらいい。

 海底でユラユラと揺れるイシガニ。大好物のイシガニ。そこにもしマダコがいたら…これは間違いなく抱きつきますね、ガッチリと。そう、マダコは、イシガニをしばっているてんや仕掛けに「乗る」のです。

 もうすでに忘年会も始まっているでしょう。乗せられるとグイグイ飲んでしまう人、いますよね。マダコもうまくおだてて乗せてください。頭の中でいろんなイメージを膨らませて、いろんなアクションを試してみてくださいな。

 渋糸を握る手を小刻みに速く、ときどきゆったりと大きく、しばらく動きを止めてからまた動かしてみたり。「絶対に釣れる小突き方」を教えたい。でも、そんなもんありません。どうやら、その日の「テンポ」があるようだ。

 タコボウズ記者は800グラムと1・3キロの2匹をキャッチできました。最初は、かなり高速の小突きだったけど、腕が疲れるばかりで反応ゼロ。この日5匹を乗せた伊勢谷健一さん(48=鎌ケ谷市)が、太極拳のようなゆったりとした誘いだったので、マネしちゃいました。すると、ふわりと仕掛けを浮かして、落とした直後に「ズーーーーン」とゴムのかたまりみたいなもんが引っ掛かる。

 テンヤバリは返しがないから、この巻き上げは休むことなく、一気に巻き取ることが大事だ。それと、腕はちょっと伸ばして抜き上げよう。船べりにくっつくと、これが強情でピタリついて離れない。手元に寄せるまで気は抜けない。

 マダコが釣れると宮川淳船長がネットを渡してくれる。安心してください、これも乗船代に入ってます。マダコをこのネットに入れたら口をしばって、海水の入ったバケツに入れてね。しばらないと逃げられちゃうから、気をつけて。

 動作だけみると海底に向かって凧あげをしているよう。東京湾のマダコ、これがね、うまいのよ。年末のマダコと対決してみませんか?【寺沢卓】

 ▼宿 富津「みや川丸」【電話】0439・87・4137。マダコの乗合は、受け付け午前6時。予約のみなさんが全員そろったら、7時前でも出船することがあります。料金は9000円、料金には、船宿特製の貸タコてんや(イシガニ付き)、貸渋糸、持帰り用ネット、氷付き。希望者には印刷した「ゆで方・下処理レシピ」を差し上げます。