初の日本海、そして新潟の海についてレクチャーしてくれたのは船長の高橋末吉さん(61)。約25年にわたって新潟の海を見てきたベテランだ。常連らの信頼も厚く、伊藤正則さん(74)は「高橋さんは本当に(釣らせるのが)うまい。新潟では1番だと思う」と絶賛する。そんな高橋さんを信じ、言われたタナを守ってひたすらその時を待った。

 歓喜の瞬間は突然訪れた。サバのラッシュが一段落した午前11時半ごろ、“ギュンッ”とサオがしなった。大きなアタリではない。しかし、この日初めて感じる感触。喉から手が出るほど渇望していた、マダイのアタリだった。ドラグを調節し、慎重にリールを巻いた。ゆっくりと焦らず、その姿をタモの中へと入れた。1キロにも満たないサイズだったが、正真正銘のマダイ。「やっと会えた」。約7カ月ぶりの再会に、心が躍った。

 この日は計6人がサオを出した。最高でも2キロ台しか釣れず、厳しい釣行だった。高橋さんは「豪雨の影響はあまりないと思うけど、潮がきつかったね。これから9月にかけては大食いシーズンになる。数も釣れるし、サイズも大きいのが釣れるよ」と話す。周辺ではカサゴなどの根魚もよく掛かるといい、アマダイやサバ、イナダなども釣れるという。

 この日は己を信じ、船長のアドバイスも信じて待ち続けた。どちらが寄ってきたのかはわからないが、つかの間の再会を果たし、日本海の荒波の音が心地よく聞こえた。【松尾幸之介】

 ▼船 新潟東港「鯛紅丸」【電話】0254・27・7845。マダイの乗合は午前5時半出船の12時半ごろ納竿。エサ、コマセ付きで大人1万800円、中学生は2000円、女性は1000円割引き。小学生は半額。沖五目や沖メバル釣りなどもある。