アマダイ-今冬、もっともブレークした魚なのではないか。70~100メートルの手ごろな底撃ち。さらにライトタックルで攻略できるのも、今っぽい。しかもこの時期のアマダイは、魚市場で水揚げされた個体は1キロ当たり3000円で取引される超高級魚だ。田子の浦「海渡」で1キロ超のデカいアマダイが釣れている…らしいので、現地に飛んだ。

 田子の浦沖で釣れるアマダイがデカい。

 ひそかに釣り人の間で囁(ささや)かれている海の“都市伝説”だ。じゃ、実際にどうなのか、現地に行ってみた。さすがに世界遺産エリアだ。富士山が美しい。太陽が上がって、雪に包まれた山肌が照れたように赤く染まる。その薄紅色がアマダイを連想させる。もしやこれは吉兆なのかもしれない。

 アマダイ、大漁…いやいや、そんな簡単に釣れる魚じゃない。アマダイ釣りだけど、あま~い妄想を振り切って現実をちゃんと見据えよう。

 今回は、日本テレビ「ザ!鉄腕!DASH!!」にレギュラー出演する木村尚(たかし)さんと同行した。木村さん、今年はまだ、アマダイで釣果を得ていない。某有名釣り雑誌での取材でボウズ(釣果ゼロ)を食らっていた情報を耳に入れていたので、耳元で「どうやら田子の浦には、すんげぇデカいのがいるみたいですよ」などと、あま~い誘いを掛けた。

 「何が何でも釣りたいんだよね、アマダイ」と木村さん。最初からこの誘いにやる気をみせた。何やらドラマが生まれそうな予感がしてきた。

 今回は、昨年の海渡の年間王者、大嶽健二さん(35=富士市)に同乗してもらった。ちなみに年間王者とは、日刊スポーツと情報提携している釣り宿が独自に選んだその年に活躍した釣り人に贈られるタイトル。大嶽さんはマダイ狙いで7キロのワラサを釣って王者に輝いたが、アマダイもスゴ腕で知られる。

 木村さんとタコボウズ記者は、まずはセオリーで攻めてみた。80号オモリのついた片天ビン仕掛けを落とす。着底したらハリス分を上げて、また、下げて、そしてまた上げて…の繰り返しだ。木村さんのサオ先がブルンッ、と反応した。巻き上げるとトラギスだった。

 木村さん この前のアマダイの釣行でもタイガースばかり。アマダイのエサを横取りしてるのかもしれない。

 木村さん、ややボヤき気味。ただ、船内の様子がちょっと違った。大嶽さんもすでにアマダイをキャッチしていたが、釣り方がなんか違う。よく観察すると、着底からリールを巻いていない。つまり、浮かさずに「ずる」イメージだ。

 市川浩輔船長 そうッスね。ここらは根がないから、底を確実に捕らえて、アマダイを誘う。なるべく浮かさないのがいいですね。

 ところ変われば、釣りも変わる。底に障害物がなくフラットな底でオモリをはわせれば、仕掛けは底面と水平に吹き流しになる。アマダイも食い付きやすい。面白い釣りだ。

 結果からお伝えすると、木村さん、ボウズでした。釣りも分かり「そのうち釣れるだろう」などと悠長に考えていたら、釣れないスパイラルに見事にハマってしまった。

 大嶽さんは900グラムの大型を仕留め、タコボウズ記者は35センチ前後を2匹。やや渋い釣況ではあった。それでも、底をたたかずにズリズリする田子の浦のアマダイ釣りには、大きな可能性を感じる。

 木村さん どこかでアマダイはリベンジしたい。

 田子の浦のアマダイ、これからが勝負ですよ。【寺沢卓】

 ▼船 田子の浦「海渡」【電話】0545・60・0708。アマダイ乗合船は午前6時すぎに集合。オキアミエサと氷が付いて9500円。ほかにヤリイカやタイ五目船などがある。