静岡・清水のクロダイの勢いが止まらない。「年無(トシナシ)」と呼ばれる50センチ超の大物が連日キャッチされている。清水「原金つり船」の吉原浩二店主は「こんなシーズンは初めて。どこまで釣れるのか、恐ろしくなる」と真顔で話す。史上最高のクロダイ-。「ヘチ釣り大好き」という渡辺久美子さんが、地元のベテランのガイドを受けて挑戦した。

 清水港のクロダイ。おからをダンゴ状にして、その中にエサが付いたハリを仕込む。独特の釣法だ。「清水のかかり釣り」と称する。

 ダンゴはハリを無事に底まで運び、少しずつ溶けてコマセとして魚を集める2つの役割を持っている。3人まで乗船できる和船を吉原船長の操舵(そうだ)する動力船で各ポイントに導き、クロダイ釣りを楽しんでもらう。天気が良ければ、絶景の世界遺産・富士山を眺めながら釣りができる。最高のロケーションだ。

 ところが、取材をした20日は雨。どんよりした雲が空を支配して、霊峰富士にあいさつはできなかった。残念だ。

 今回は、かかり釣りのベテラン、久保和也さんを案内人として、最も沖に近い一文字に入った。クロダイ釣り「大好き」と公言する渡辺さんが、糸を垂れた。現在関東地区在住だが、かつては大阪に住んでいて、港の岸壁での落とし込みチヌ(クロダイ)を得意としていた。チヌ釣り大会での上位入賞は何度もある。過去に3回、清水港を訪れており「よく釣れた印象しかない。清水港は大好きです」と笑顔を見せた。

 おからの入ったバケツにアミやサナギ粉、さらに重さを出すために細かい砂利を均等に混ぜる。ここに海水を差し込んで、耳たぶより柔らかく仕上げる。ダンゴの素材だ。

 渡辺さんは最初、ハリ&エサをダンゴの中心に入れて、テニスボール大の玉を両手で握りしめてつくった。ダンゴで底まで沈められると思い、オモリは何もつけなかった。

 違和感を察知した。

 渡辺さん 一文字の水深は16~17メートル。順調に落下するけど、着底する直前でパカッと割れてしまう。

 久保さんがダンゴをチェックすると「やや、握るのが足りないかも。もうちょいギュッと力を込めてね。それとほんのちょっとだけ水をくわえた方が、バラけが遅くなるねぇ」と、即座にアドバイスしてくれた。

 ガン玉5Bをハリの上にかませて、着底しやすいようにした。その間、さっそく久保さんは底付近でのアタリを見逃さず、44センチと46センチを連発で釣り上げた。

 この勢いに乗って、渡辺さんのサオも曲がった。しかし、ショウサイフグだった。渡辺さんのホッペも自然と膨らんだ。

 渡辺さんは考えた。確実に底を取れている久保さんは連発。ただ、握力が甘い渡辺さんでは、途中でダンゴが割れてしまうことが何度かあって、底付近におけるエサのアピール度が低下してしまう。さらにダンゴがばらける周辺では、フグなどのエサ取りを虎視眈々(たんたん)と狙っている。

 渡辺さん ダンゴは船の下に落として、フグの注意を引かせて、タングステンシンカーの7グラムをチョイ投げして、コマセの煙幕の際にいるクロダイを狙う作戦を考えました。

 見事、的中。作戦変更後、4投連続でクロダイを釣り上げた。午前9時半まで苦しんだが、わずか30分で38~45センチの良型を仕留めた。途中、久保さんと釣り合戦となり、久保さんは最後の6匹目に50センチジャストの年無をヒットさせ、渡辺さんは5匹目を48センチとサイズアップさせた。

 ここで東風が強く、ウネリもキツくなり、吉原船長から撤退指示。午前10時半の早上がりながら、満足の釣行となった。

 渡辺さん 今度はちゃんとダンゴの中にハリを入れ込んで釣ります。清水港のクロダイ、最高ですね。

 ▼船 清水「原金つり船」【電話】054・352・3065。3~4月は午前6時出船。「平日/土日祝日」料金は(税込)、1人「6696円/8316円」、2人「9072円/1万800円」、3人「1万1448円/1万2960円」。昼食は鍋焼きうどんやカツ丼などの出前も。