今春の駿河湾は大きなマダイの宝庫だ。4月10日に8・74キロが釣れた静岡・久料「魚磯丸」に大魔神こと佐々木主浩さん(50=本紙評論家)が乗り込んだ。タナを少しずつ上げて、狙ったマダイを誘い出した。結果は計3匹。警戒心の強いマダイとの知恵比べ。強打者を打ち取る投球術に似たサオさばきに注目されたし。

 久料のマダイにスイッチが入ったのは3月31日だった。午後便の終了間際、井上雅之さん(51=茅ケ崎市)が5・08キロを釣りあげた。8日午後便で石井正徳さん(35=大井町)が6・6キロ、9日午後便で5・2キロ、10日やはり午後便で佐田直哉さん(43=甲府市)が8・74キロを引き寄せた。

 その後も12日午後便で永田浩章さん(41=藤沢市)が6・26キロ、同乗していた釣り人が5・2キロ。その後も3~4キロはコンスタントに釣れていた。そんな状況下で、3月下旬に大魔神登場となる。

 久保田清船長は「今年のマダイの魚影はちょっとここ数年では見られない傾向。魚探(魚群探知機)の画像から推察すると、底から5メートルはまっ赤になっている。相当数のマダイがいるとみて間違いない」と驚く。

 久料は20~30メートルの浅場が広がり、ところどころに急に深くなるカケアガリがある。しかも湾状にえぐれているため、どんな風が吹いても裏をとることができて、強風で底荒れすることも少ない。通年でマダイ勝負ができる地形なのだ。

 大魔神と久料。切っても切れない縁で結ばれている。12年前、やはり午後便だったが、日が暮れる寸前で11キロをキャッチした。いまだに魚磯丸のレコードになっている。大魔神の大物ハンターたるゆえんでもある。

 3キロ超の釣果が午前便にも広がってきたころだったこともあり、集合は午前4時30分。意気揚々と海に出て、その海をみて大魔神がポツリ「いい感じですねぇ」。野球とは違うアンテナなのか、釣り師センサーが働くようだ。

 サオを出して、しばらくすると船中では大にぎわいになった。山梨県からのグループは1~2キロ級を次々に引っこ抜いて歓声をあげた。タコボウズ記者もサオを出していたが、写真撮影でエサのオキアミをハリに付けることもできない。うれしい悲鳴だ。記者冥利(みょうり)に尽きる。

 大魔神にもきた。タモですくうと2キロ級の良型。掛けたハリを見ると下アゴの歯の手前に皮1枚。

 大魔神 これ、どうやって食ったんだろう。普通は上アゴ、ッスよね。魚の活性が良くて浮いてるから下アゴなのかな。

 これがヒントになった。水深74メートル。船長からのタナ指示は海面から50メートル。この指示は10メートルのハリスを計算して、コマセカゴの位置をさしている。

 大魔神 この指示ダナは目安になっていて、船長はマダイに上を向かせたい。だから、この指示ダナより下げてはいけない。マダイのやる気をそいでしまう。少しずつタナを上げていくのは魚の活性を高めるので大丈夫。コマセマダイは船全体のチーム戦だ。野球と同じですね。

 ベンチで采配を振る監督のように落ち着いている。サオも手持ちではなく、ロッドキーパーに固定して船の揺れで誘う。コマセも少なめでポロン、ポロンと浮遊させる程度の演出は欠かさない。

 この後、大魔神は1・5キロと1キロを追釣。3匹の釣果を収めた。

 大魔神 大きさは選べないから仕方ないけど、数釣りはできそう。久料、いいんじゃないですか。

 現在、3匹の重量で競う駿河湾マダイダービーが開催中で、今月31日まで続く。大魔神は「今回は3匹そろったけど、記録は次で」と参戦は次回以降に。久料のマダイ、初心者にも優しいので、コマセダイでデビューしたい人も待ってますよぉ~。【寺沢卓】

 ▼駿河湾マダイダービー 3月10日~5月31日に釣ったマダイ3匹の合計重量で競う。期間内なら何度でもチャレンジできて、1匹からの入れ替え可能。参加料金は船代以外に初回に1000円、参加賞保冷バッグが渡される。対象宿は魚磯丸以外には御前崎「博栄丸」、大井川港「海政丸」、戸田「たか丸」、安良里「ふじなみ丸」。各宿の連絡先は釣果速報で確認してください。