「第42回G杯争奪全日本アユ釣り選手権」(主催・(株)がまかつ)が6、7日、高知・仁淀川で地区予選を勝ち上がった48選手(シード、推薦を含む)が参加して行われた。決勝戦は柳瀬で午前11時半から1対1で対戦。上、下流を1時間交代で釣り、初出場の山口浩平選手(長良川)が背バリの引き釣りで21匹(オトリ2匹込み)追わせ、佐藤豊文選手(相模川)に4匹差をつけて見事、初優勝を飾った。3位には、藤井夢人選手(三隈川)が入った。

 検量が終わり、優勝が決まった瞬間、山口選手の目に涙がにじんだ。「めちゃくちゃうれしい」。表彰台の頂点に立つと恩師と喜びを分かちあうように優勝カップを手に天を見上げた。

 G杯はアユ釣りを始めたころからのあこがれ。「がまかつのテレビ番組(がまかつ 日本列島釣りある記)で、G杯アユが放送されるのを見て、いつか、自分も、この舞台に立ってみたいと思った」。そんな少年の夢が最高の形でかなった。

 早掛けを競う予選は42ポイントで1位通過。ベスト8に駒を進めた前夜、あこがれの先輩・小澤剛さん(G杯アユ3勝)から「優勝するまで帰ってくるな」とゲキをもらい、奮起。準々決勝は7対2匹で快勝、準決勝は同匹数の重量差でクリア。ニゴイに悩まされた末に僅差で表彰台が決まり「しびれました」と振り返る。

 柳瀬で行われた決勝戦ではジャンケンに勝つと、迷わず上流側を選択。「下見で釣れるとわかっていた」柳橋の下手(瀬肩の鏡)へ。「以前、試合で攻めの釣りをみせつけられた」小澤さん譲りの引き釣りで躍動。オトリが嫌がらない限り、背バリで扇状にどんどん引き上がり、佐藤選手に7匹差で場所交代。後半は守りの釣りで5匹を追加し、21匹対17匹で逃げ切った。

 優勝インタビューで師匠のことを聞かれると「3年前に亡くなりました。所属クラブの会長だった方(鈴木俊行さん)で、高校生のころからお世話になり、友釣りの楽しさを教えてもらった。弟子の中から全国大会で優勝する姿を見せたかった。墓前にいい報告ができます」と男泣き。

 来年は覇者として負けられない戦いが待っている。「1年間、しっかりG杯覇者の自覚を持ってがんばります。目標は小澤剛。彼に近づけるように、引き釣りだけでなく、垂直泳がせなど、ピンポイントの釣りも身につけたい」と連覇に向け意気込みを語った。

 魚釣りは男のロマン。先人に学び、ともに、夢中で獲物を追い求め、深まっていくきずな。トーナメントを通じて、切磋琢磨(せっさたくま)しながら培っていく技術、友情。そんなアユ釣りに対する情熱、魅力を感じさせる大会だった。【近江康輔】

 ◆大会メモ 6日の予選は48人が4組(黒瀬上下流、片岡、鎌井田地区)に分かれ、オトリ込み10匹(10センチ以上)の早掛け方式(1位12ポイント、2位11ポイント、3位10ポイント…)で4試合(1試合90分)を戦い、各組の合計得点上位2人が勝ち上がった(同ポイントは総匹数で順位を決定)。7日の決勝トーナメントは抽選で対戦相手が決まり、オトリ2匹を含む総匹数で勝負。準々決勝(黒瀬)、準決勝(柳瀬)は前半45分、後半45分で対戦、決勝戦(柳瀬)、3位決定戦(同)は前半60分、後半60分で上、下流を交代して戦った。

 ◆フィールドメモ 西日本最高峰・石鎚山に源がある仁淀川は全国トップクラスの水質を誇る。特に渓谷部の水質がよく、神秘的な青色をしており、仁淀ブルーと呼ばれる。本流でも、川底から伏流水がわき出ているため、夏場でも水温が比較的低く、天然のうまいアユが釣れる。川幅が広く、砂地の小石底が多いのが特徴で、底の変化を釣っていくのがセオリーだ。アユ釣りのほかにも、4駆の車で河原に降り、カヌーやキャンプを楽しむ人が多くみられる。