児嶋秀一選手(今治2)が19回連続でG杯を獲り続けた中国地区勢の躍進を止め、四国地区勢として22年ぶりにG杯制覇を成し遂げた。チヌ(25センチ以上)の総重量を競う「第37回G杯争奪全日本がま磯(チヌ)選手権」【主催・(株)がまかつ】が3日、広島湾一帯の磯で全国の予選を勝ち上がった36選手(シード、推薦含む)が参加して行われた。予選リーグを勝ち上がった3人が阿多田島で戦った決勝戦はチヌの食いが渋く沈黙が続いたが、終了2分前に児嶋選手が唯一のチヌを食わせ、見事、初優勝。2位は菅野雅之選手(徳山)、3位は小川達矢選手(今治1)が予選リーグの成績で入った。

決勝戦の終了間際、緩かった潮が動きだした直後、児嶋選手の棒ウキがスーッと海中へ。沈黙を破るように竿をしならせ、チヌがタモに収まった瞬間、ギャラリーから、大きな拍手と歓声がわき起こった。

午後2時45分から阿多田島の外浦のスベリを舞台に菅野、小川選手と40分ごとに釣り座を替わって2時間戦うが、チヌからの反応は全くなし。掛かるのは餌取りだけ。3者共に釣果無しかとあきらめかけた残り2分にドラマが起こった。

沖のかけ下がりを狙う児嶋選手のウキが右への流れだしをとらえると、モゾモゾとした前アタリが。刺し餌(生オキアミ)の頭がかじられる反応にチヌだと確信。そして次投、見事に本命の口元をとらえた。合わせが決まった瞬間「気持ち良かったです」と振り返る。

児嶋選手は13年前からG杯に挑むが、ことごとく予選落ち。体力に不安を感じるようになった56歳で初めて全国大会出場を果たした。決勝では腕がしびれ、腰痛でしゃがみ込む場面も。それでも「餌取りの反応がわかりやすく、手返しのいい釣りができる」愛用の棒ウキで、粘り強く戦い続け、会心の1匹を仕留めた。

ホーム・今治の磯はチヌの魚影が濃く、変化に富んだ釣り場。そんな抜群のフィールドに通い、マイペースで自己流のフカセ釣りを磨いてきた。G杯は「毎年、腕試しのつもりで挑戦してきた」と話す。それだけに若手トーナメンターのような気負いはなく冷静な釣りが信条。予選からあせることなく普段の釣りを貫いた。

優勝カップを手にすると「粘り強さで魚を浮かせてくれるがまかつの竿が好きで、1度はG杯に出てみたいと頑張ってきた。感無量です」と緊張した面持ちで喜びを口にした。信じたウキで会心の1匹を食わせ、ほれ込んだ竿をしならせる喜びは何ものにも代えがたいものだったに違いない。【近江康輔】

◆児嶋秀一(こじま・ひでかず)1962年(昭37)4月7日生まれ。松山市在住。自営業。チヌ釣り歴13年(グレ35年)ホームは愛媛・今治の磯。GCS、釣和会、GFG愛媛支部所属。