こっそり教えます、東京湾にシロギス、戻ってきてますよ。今年、不調だった「ビギナーのアイドル」シロギスがようやく釣れるようになってきた。小さいサイズも釣れてしまうが、最終的には20センチ前後の型物がそろう。年間を通して東京湾でキスを狙う山下橋「広島屋」から出漁した。

今年の序盤、東京湾からシロギス(以後キス)が消えた。こんなことは今世紀に入って初めてだ。四季を通じて江戸前のキスを追い続ける「広島屋」石井晃船長は「こんなこと今までになかったですよ。どこを探しても反応しない。最近ではアジのお客さんが多い。数釣れるし、しかも30センチ近いデカいサイズだから、キスの存在が薄くなってきた」とさみしそうに話した。

キスといえば、船釣りの初心者やビギナーが「まず慣れるための入門編」として選択してきた簡単な釣りの代表格だ。<1>オモリを底まで落とす<2>手返しの勉強になる<3>いろいろな魚が釣れる、の3点が特徴だ。

<1>仕掛けが胴付きでも片天ビンでも、オモリは必ず底まで落とす。海底に仕掛けを着けるのは、ポイントの水深を知ることと、魚のアタリを明確に感じるために重要になってくる。この「底を取る」ことがすべての釣りの基本となる。

<2>釣った魚を船内に取り込んで、ハリから外して、またエサを付けて海に仕掛けを投入する一連の所作を「手返し」という。数釣りができるはずのキスなので、練習には最適。仕掛けを海に放り込んで、ちゃんとハリにエサがついていないと魚は釣れないのだ。

<3>キスだけではなく、底をなめるように仕掛けを操作するので、イシモチ、トラギス、マダイ、クロダイ、アナゴ、アジ、カワハギなど、釣れるゲストも多種多様。クーラーボックスがにぎやかになることが約束できる。

さて、実釣だ。12日に乗った。乗船者はタコボウズ記者を含めて3人。釣れるようになったのに、平日とはいえ寂しい。東京湾でキスの釣り場はいろいろあるが、南北に約11キロの長さの水中島・中ノ瀬。神奈川と千葉が陸続きになって、地殻変動で分かれて東京湾ができたとされるが、その際に海に残った残骸が中ノ瀬なのだ。キスの釣り場としては最適。今回は中ノ瀬のすぐ東側の木更津沖でサオを出した。

タコボウズ記者は胴付き1本バリ仕掛けで、サオは2本出した。結果論から言うと、置きザオにしていると船の揺れだけで簡単に釣れる。手で持ったサオにも、道糸を常にピンと張るのではなく、ちょっと緩めて、ときどき張るを繰り返すと、面白いように釣れる。しかも20センチ前後が多く、かなりの数はいそうで、なぜ今年の冬と春に反応しなかったのか分からない。

今、本当にチャンスだ。脂乗りもよくでっぷりした魚体なので、刺し身にしてもおいしくいただける。何度も繰り返すが、東京湾のキスが“推しメン”ですよ。【寺沢卓】

▼宿 山下橋「広島屋」【電話】045・622・8615。ショートシロギス船は午前7時30分出船、沖あがり午後1時30分ごろでエサ付き7500円。オモリは15号。LTアジ(ビシ40号)も出船は同じく午前7時30分、沖あがりは午後2時30分で、エサ&コマセ付きで9000円。土日限定の夜メバル&カサゴは午後5時15分出船、沖あがり同9時ごろでエサ付き6500円。オモリは10号。木曜定休。