「第37回G杯争奪全日本がま磯(グレ)選手権」『主催・(株)がまかつ』が3、4日の両日、大分・佐伯市の米水津の磯で全国11会場の予選を勝ち上がった36選手(シード、推薦含む)が参加して行われた。2日目の決勝戦は午前11時55分から「千畳敷」で1時間40分戦い、田揚清明選手(34=尾鷲)が1905グラムを釣り上げ、2位の古瀬徹選手(50=五島列島・宮之浦)に495グラム差をつけ、初優勝を果たした。3位には鶴永貴史選手(47=米水津1)が入った。

「やっと勝てました。めちゃくちゃうれしい」。決勝戦の検量が終わった瞬間、田揚選手が両手の拳を突き上げ、喜びを爆発させた。23歳からトーナメントに挑戦するが表彰台への道は遠かった。若い時から「魚がつく」(グレがその人の釣りに呼び寄せられる)と有望視され、幾度となく上位に勝ち上がるも「技術が足らず」今1歩の4、5位止まり。「悔しい思い出ばかりです」と振り返る。それだけに感極まり、しばらくの間、下を向いて涙した。

田揚さんの前に立ちはだかってきたのは九州の強者たち。「僕らにはない釣りをするんです。ほんとにうまい」と舌を巻く。G杯においても、95年以降、片伯部光広選手の5勝を筆頭に池永祐二選手、幸森大輔選手の2勝など九州の名手が名を連ねる。

今回も、地元で11年の覇者・猪熊博之選手、前年のチャンピオン・江藤憲幸選手らが参戦。そんな強豪を押しのけての快挙に「運でも何でもいいから勝ちたかった。しかも、地元が強いとされる米水津の磯で優勝できるなんてほんとうにうれしい」と達成感に浸った。

決勝戦の舞台は千畳敷。向かい風とうねりがある中「おうちゃくな釣りをするな」という師匠(数多くのトーナメント優勝を誇る名手・宮川明氏)の教え通り、刺し餌とコマセをていねいに合わせる釣りを貫いた。大学進学後は大阪に住むが、生まれは長崎・五島列島。5歳のころから、祖父の船で磯へ渡り、グレを釣っていたというだけあって、潮を見極める目は確かだった。

潮が込みだし、海況が刻々と変化していく中「1カ所にこだわらず、全体を見渡し、潮がつくところを的確に攻めた」という釣りで前半に2匹、後半に2匹の1905グラムをキープ。PEラインでウキをしもらせて追い上げる古瀬選手を1匹(495グラム)差で退けた。

悲願のG杯を手にすると「この喜びは師匠はもとより、いつも、快く釣りに行かせくれる妻にささげたい。勝負ごとには大事だからと、大会に行く時にはお守りを持たせてくれるんです。運を引き寄せてもらいました」と感謝の気持ちを口にした。

これからは、G杯覇者としてさらなる進化が問われるが「どんな悪条件でも、まき餌、仕掛けを正確にコントロールできるようにもっともっと精度を上げていきたい」と飛躍を誓った。【近江康輔】

◆田揚清明(たあげ・きよあき)1984年(昭59)4月15日生まれ。大阪府交野市在住。自営業。グレ釣り歴13年。4年前からアユの友釣りもしている。守口荒磯釣りクラブ、チームS所属。ホームは特になし。紀伊半島、四国、九州の磯へ釣行。伊豆諸島・神津島、イナンバなどへの遠征もする。