元モデルの歯学博士・照山裕子さんが、口臭が気になる、歯周病が進んできた…歯と口の悩みなど、皆さんの悩みに回答します。

 Q 大人の虫歯は痛みがなくて気付きにくいと聞きますが、なぜですか。

 A 虫歯は、糖分を栄養として増殖していく虫歯菌が、糖を分解して取り込む際に酸を出して歯を溶かし、穴が開いた状態です。子どもの歯は軟らかいため、簡単に虫歯になります。

 歯の表面のエナメル質の硬さは人によって違うため、虫歯になりやすい人、なりにくい人はいますが、一般に大人の歯は硬く、よほどほったらかしにしない限り歯の表面が虫歯になることはありません。大人の虫歯の多くは、子どものころ、虫歯になって金属の詰め物、かぶせ物をした、その下で虫歯が始まる2次齲蝕(うしょく)です。

 神経がある歯であれば、しみたりとか症状がありますが、神経を取っていることが多いため痛みを感じることがありません。詰め物、かぶせ物が外れたりしない限り分からない。外れて中を見たらグジャグジャに溶けていた。歯を抜かなくてはいけないということがよくあります。

 症状がないから早期発見が難しい。歯科医院でエックス線を撮っても金属が光って下の虫歯が写らないため、段差ができるほど進行しない限り分かりません。

 私の経験で言うと、大学生のころに詰めた金属を、見た目が悪いため、5、6年たって、白い物に替えようと思って外したところ、中は真っ黒でした。歯学部の学生なので歯磨きもケアもちゃんとしていました。それでも真っ黒になるくらい、金属は変形し、隙間から虫歯が進むのです。

 先進国で金属をかぶせているのは日本だけです。保険適用で金属を入れていることが、歯を悪くしているのは間違いない事実です。小さいころに詰めたり、かぶせたりした物は、大人になったらやり直す、汚れがつきにくく、長持ちする素材に替えることをお勧めします。今の世の中ではセラミックが一番ですが、歯ぎしりがひどかったり、顎(がく)関節症の人には硬すぎで勧められないこともあります。

 ◆照山裕子(てるやま・ゆうこ) 歯学博士。厚労省歯科医師臨床研修指導医。歯と全身の関わりについて幅広く学んだ経験を基に、機能面だけでなく審美的要素にもこだわった丁寧な治療がモットー。分かりやすい解説でテレビ、ラジオにも多数出演している。学生時代はモデル事務所に所属。近著に「歯科医が考案 毒出しうがい」(アスコム)。