元モデルの歯学博士・照山裕子さんが、口臭が気になる、歯周病が進んできた…歯と口の悩みなど、皆さんの悩みに回答します。

 Q 歯磨き粉はいろんな種類があって値段もさまざまです。つい特売品を選んでしまうのですが。

 A 小さなときは子ども用の歯磨き粉を使っていても、中学生になると大人と同じ。1本のチューブを家族全員で使っている家庭が多いのではないかと思います。

 でも大人と子どもが同じでよいわけがありませんよね。まだ歯が軟らかい子どもは、虫歯予防のために歯を硬く、強くするフッ素が入っているものになりますし、大人なら虫歯予防より歯周病ケアに重点を置いていただきたいです。お年寄りの場合は根面齲蝕(歯の根元の虫歯)の方も多いので、フッ素ジェルを部分的に擦り込む必要が出てきます。また、粒子の大きな研磨剤が入っているものは子どもの軟らかい歯を傷めてしまう可能性がありますし、大人でも知覚過敏の人には適さないことがあります。知覚過敏の原因の1つには磨き過ぎもあり、粗い研磨剤が入っているもので力強くゴシゴシ磨いた結果、表面が削れてしみる症状が出ます。しみ始めるとうまく磨けずプラークが溜まってしまい歯周病を招くこともありますし、放っておくと神経までダメージが及ぶケースも。ですから、お口の状態や体調、季節に応じて変えた方が良いと思っています。

 虫歯予防、歯周病予防、口臭予防、プラーク(歯垢)の分解、歯石沈着防止、知覚過敏抑制、たばこのヤニ除去…目的によって薬用成分も変わってきます。

歯磨き粉はそもそも補助的なもので、極端な話、正しいブラッシングができれば使わなくても汚れは落ちます。ご質問の特売品の歯磨き粉についても、さっぱり感が得られるのであれば、毎日使うものであるし、朝昼はそれでも良いと思います。

何より大事なのは、磨くという習慣です。先日、友人の循環器内科の先生と話していて、1日1回しか磨かないと言うので新鮮な驚きがありました。いろんなアンケートを見ていると、1日2回磨くという人が大体半数。男性は女性より少なく、1日1回という人が2割以上いるようです。世の中には虫歯になりにくい人がいるのも事実ですが、理想は1日3回。普通は朝晩2回です。寝ている間は唾液の自浄作用が働かず細菌が繁殖しやすいと言われています。1日1回にするなら夜にしましょう。

 ◆照山裕子(てるやま・ゆうこ) 歯学博士。厚労省歯科医師臨床研修指導医。歯と全身の関わりについて幅広く学んだ経験を基に、機能面だけでなく審美的要素にもこだわった丁寧な治療がモットー。分かりやすい解説でテレビ、ラジオにも多数出演している。学生時代はモデル事務所に所属。近著に「歯科医が考案 毒出しうがい」(アスコム)。