ネット依存症治療に詳しい「久里浜医療センター」の樋口進院長に聞く。

 ◆質問 現代人はみなスマホ依存なのか?

 樋口院長 例えば帰宅してもずっとスマホとにらめっこで、家族と話もしない。そんな人に聞くと、「私はどこも悪くない」と言うのです。しかし、家族からすればとんでもない。きちんと仕事をしている人であっても、それ以外の生活は全部スマホに占有されている。客観的にみれば、これはやっぱりおかしい。

 しかし、こうした生活を送っている人がたくさんいる。「依存」行動が明らかにある、それに伴い問題が起きているが、本人は問題だとは思っていないのです。親が子どもと関係しない生活は、私からするとやはり問題です。「赤信号みんなで渡れば怖くない」のごとく、本当はおかしいのだが、それが問題として取り上げられていない。こうした状況は変えていかないといけないと思います。

 ◆質問 「依存」の脳への影響は?

 樋口院長 実は、そのあたりはなかなか難しい。結果として、ある程度のことが4つ分かっています。

 まず、私たちの生活は、脳の中の理性の部分と、感情や欲望といった部分とがバランスを取りながら成り立っています。頭にきたこと、やりたいことがあっても、周りを見て「ちょっと待てよ、ここは抑えよう」という、いわば「理性」の部分です。理性の脳が働かなくては、人はやりたいことを好きなだけやるようになります。それがゲームだったり、SNSだったりするとどうでしょうか。

 理性の脳がよく発達していない段階では、そうした行動に移りやすい。別の言葉でいえば「衝動コントロールができない」といえます。これはまさに未成年です。未成年は、大人に比べて衝動のコントロールができない。ゲームやSNSにはまって親の言うことを聞けなくなっているのは、病的である一方、生理的(発達上)な面として理解され得るということなのです。

 未成年はよりリスクが高いのだ。(続く)