今年も、球児に魅せられる夏が始まる。夏の甲子園の開幕が、迫っている。日本ハムでは本拠地・札幌ドームでの試合前、食堂などで中継が流れる。高校球児が躍動する舞台は、プロになった選手も注目している。その様子を、物珍しげに見つめる外国人選手。レアードは甲子園をきっかけに、中田の出身校が大阪桐蔭だと知り、自慢げだった。高校野球がもたらす影響力を、こんな形でも実感する。

 06年夏の甲子園。早実のエース斎藤は、全国の頂点に立った。マウンドでの姿はもちろん、端正なルックスも相まって人気は上昇し続けた。プロ入り後は、梨園に囲まれる、のどかな2軍の千葉・鎌ケ谷は「佑ちゃんフィーバー」で沸き上がった。「異常でしたからね、あの時は」。斎藤は、今も戸惑いながら当時を述懐する。成し遂げたことの大きさを物語っていた。

 今も変わらない声援に、斎藤は後押しされている。プロ7年目。1、2軍を行き来するふがいない姿にも、早実時代からのファンから力強いエールが変わらずにある。今月上旬、2軍での大谷の復帰登板に2番手で登場。5回1安打無失点の好投。そこには大谷に向けられる視線以上に、熱いまなざしを送るファンの存在があった。

 翌日、小躍りするようなファンに囲まれながら、斎藤は球場を引き上げてきた。「僕が引退した時、この方達は…と心配になることはありますね」。ともに野球人生を歩んできたファンの心情を、おもんばかることもある。「好投した時は、僕以上に喜んでくれる。もう身内のような存在ですよ」と照れくさそうな少年の顔で言った。そして太陽の下、感謝を込めた笑顔をファンに向けていた。【日本ハム担当=田中彩友美】