シーズンが終わると始まる戦力外通告。

 楽天でも、育成選手を含めて計14選手が、戦力外通告を受けた。

 10月28日、第1弾が発表された。その中には05年高校生ドラフト1位の片山博視、11年ドラフト1位の武藤好貴の名前があった。宮城・仙台の球団事務所で、その旨を告げられる。妻子ある者、故障に泣かされた男…。プロ野球という厳しい世界では、結果が全てと痛感する時期でもある。

 08年ドラフト2位で入団した中川大志もその日、戦力外通告を受けた。「家族がいるんで、とにかく仕事を探さないといけない」とリアルな現状を話した。今季は23試合出場で打率1割1分8厘、本塁打は0に終わった。楽天では通算118試合で打率2割2厘、7本塁打だった。右の長距離砲として期待されたが、なかなか結果が出なかった。多くの先輩からもかわいがられた男。「何であいつが」と、言う選手もいた。

 その日の夜のことだった。突然、先輩の枡田慎太郎から「飯に行こう」と連絡を受けた。プライベートでもよく食事に行く仲の2人。カウンターで2人肩を並べた。たわいもない話、仕事のこと…。時間は、あっという間に過ぎた。枡田は「こんな時だし」と多くは語らなかったが、中川は「誘ってくださって、本当にありがたかった。一生忘れません」と、かみしめた。誰しもが自分のことで精いっぱいのはず。だが、枡田は違った。なかなか出来ない。本当の「男」を感じた。【楽天担当=栗田尚樹】