やっぱり、阿部ちゃんは「何でも屋」だった。

 3月16日、楽天は静岡・草薙球場で阪神とのオープン戦を迎えた。雨天の影響でチームは、本球場から徒歩5分ほどの距離の室内練習場でアップを開始した。ユニホーム姿の群衆の中に、1人だけスーツの男性がいた。昨季限りで、楽天を戦力外となった阿部俊人さん(29)だった。相変わらずの笑顔で仲間たちと談笑している。こちらに気付くと「元気すか?」と昔話に花を咲かせた。

 今年から楽天イーグルスアカデミーのジュニアコーチとして第2の人生をスタートした。「面白いすよ。面白い子ども多いし」と順調さがうかがえた。この日は人生初のテレビの解説として、来たという。「緊張しますね。何を話していいのか。みんなにも『解説とか出来ないでしょ』と言われましたから」と笑った。

 現役時代は内野のユーティリティープレーヤーとしてだけでなく、時には捕手としてブルペンで投手の球を受けることもあった。そしてエンターテイナーとしても、仲間たちを盛り上げた。インターネットで「いたずらグッズ」を物色し、本物とうり二つのムカデ、触ると電気が走るペンなどを購入し、常に周囲に笑いを振りまいた。

 当時から「何でも屋」だった。この日から3日間務めた解説者、のはずだった。スーツ姿で、グラウンドを駆け回っている。ノックの手伝い、ボールの準備など、チームスタッフの役割を担っている。周りから「解説の阿部さんですか?」と、いじられる。相変わらずの姿が、そこにあった。【楽天担当=栗田尚樹】