5月23日、2年目のロッテ有吉優樹投手(27)がプロ初先発を果たした。あいにくの雨天だったが、誰の足跡もない真っさらなマウンドに向かう。登場曲は昨季使用していた猿岩石の「白い雲のように」に戻っていた。

 「最初は『何言ってんだ、この人』と思いました」と、あの日を振り返る。4月29日の朝、ZOZOマリンの選手食堂で腹ごしらえしようとしていた有吉に、梶原紀章広報が興奮気味に携帯を見せてきた。ツイッターの画面だった。

 「広島が血液に染み込んでいるカープファンですが、同姓という特殊事情でロッテの有吉投手も応援しています。何卒お身体ご自愛ください」

 投稿主はお笑いタレントの有吉弘行。有吉自身も同姓という“特殊事情”で、プロ1年目の登場曲を猿岩石のヒット曲にしていた(決めたのは涌井だが)。

 広報のハイテンションが一瞬では理解できなかった。が、テレビで見ない日はない超有名人からのメッセージと分かると仰天した。「番組、けっこう見てます。試合後に帰ると深夜帯なんで、ちょうどテレビを付けるとやってるじゃないですか。『かりそめ天国』とか『有吉反省会』とか」。

 今年、有吉は登場曲を一度別の曲に変えている。オープン戦から採用したのはナオト・インティライミの「Brave」。曲を決めたのは梶原広報。不振に苦しむ有吉から「かじさん、選んで下さい」と頼まれた。こんな歌詞だ。

 「僕ならできるって 思いながら闘って 新しい未来をイメージすればいい あの虹を渡って まだ見ぬその先へ 自分を信じて 始まったばかりさ」

 まだ2年目のシーズンが開幕したばかり。新しい未来は自分の手で切りひらける。初先発が決まると、有吉はこう言った。「かじさんからのメッセージは、この曲から受け取りました。僕は、プロに入った時は開幕ローテーションに入りたかった。大学、社会人とずっと先発志向だった。初心に戻ります」。

 中継ぎの適性を見いだされ、昨季は53試合に登板して即戦力の期待に応えた。だが続いて与えられた役割はスターター。配置転換とともに、登場曲も“初心”に戻した。「有吉と言えば」な曲らしく、ファンの反応も上々。日本ハム戦は5回2失点で勝ちこそ付かなかったが、井口監督に「十分な出来。次の登板も楽しみにしたい」と言わしめた。

 「白い雲のように」はこのフレーズで終わる。

 「見えない未来を夢みて 白い雲のように」

 有吉弘行からのエールも、梶原広報からのエールも、いつも声援を送ってくれるファンのエールも、すべて力になる。「後ろは後ろの楽しさ、先発は先発のやりがいがある。(先発起用は)いきなりだったんで、まだどっちがいいのか分かりません」。どちらにせよ、僕ならできる。見えない未来は、自分を信じた先にある。【ロッテ担当 鎌田良美】