最初は、とても先輩にはかなわない。それが実績を重ねていくうちに、少しずつ背中が見えてくる。やがて、追い付き、追い越したくなる。健全な感情だろう。西武秋山翔吾外野手(30)の場合、そのための舞台がメジャーなのかも知れない。

プロ8年目を終え、初めて将来的な米球界挑戦の可能性を口にした。

「イチローさん、青木さんに近づきたいという気持ちがあるんです。海外を知っている2人に。自分にも、その選択肢が出来たらいいな、と思っています」

イチローは「お会いしたこともない。本当に存在するのかな」というほど憧れの存在。ヤクルト青木は17年にWBC代表で一緒にプレーして、人間性、リーダーシップにひかれた。どうすれば、2人のようになれるのか。同じようにメジャーでプレーできたら、近づけるかも-。順調にいけば、来季中に海外FA権を取得する。早くて20年からの挑戦が可能となる。夢の実現ではなく、偉大な先人に近づくため。求道者然とした秋山らしい。

気持ちを再認識させられたのが、今回の日米野球だった。「試行錯誤して楽しかったですね」。メジャーリーガーの速く、強い球に対応すべく、右足の上げ幅を小さくした。5試合で20打数7安打、打率3割5分。7打点はトップタイ。結果につながり、よりメジャーが身近になったようだ。

来季で3年契約が終わる。くしくも、海外FA権取得と同じタイミング。「時間は、なくなってきている」と年齢を自覚するだけに、来オフは決断の時となりそう。一方で、今季日本一を逃した悔しさは並大抵ではない。「今は来季へ、しっかり取り組むことを考えてます。だから日米野球も準備して臨みました」にウソはない。NPB史上、1シーズンでもっとも多く安打を放った男は、どういう決断を下すのだろう。【古川真弥】